2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

紅葉狩:伝説から芸能へ

湾岸地域でもモミジが色づき始め、妙高からは紅葉の便りが届いています。そうなると、思い出すのは紅葉伝説。「鬼滅の刃」で脚光を浴びている鬼たちですが、その鬼が登場するのが戸隠、鬼無里、別所温泉などに伝わる鬼女伝説で、黒姫伝説と並んでよく知られ…

ヒイラギモクセイ(柊木犀)の白い花

今はあちこちで金木犀の香りが続いているが、よく似た微かな香りで目を向ければ、白い花が見える。近づいて確かめれば、正体はヒイラギモクセイだった。ヒイラギモクセイはモクセイ科モクセイ属の常緑小高木。ヒイラギ(柊)とギンモクセイ(銀木犀)の交雑…

黒姫山の伝説雑感

かつて黒姫山という相撲取りがいました。1948年生まれで私とほぼ同年配、師匠の立浪は同じ新潟県出身の羽黒山でした。「黒姫山」という四股名は妙高山の隣の黒姫山なのかと訝る程度で気にもしていなかったのですが、彼の出身が旧青海町(現糸魚川市)である…

シナアブラギリの実

シナアブラギリ(支那油桐)の別名はオオアブラギリで、トウダイグサ科アブラギリ属の落葉高木。中国原産で、アブラギリほど多くはなく、野生化している。高さは10~12m、樹皮は灰褐色でなめらか、枝は太くて無毛、はじめ緑色で、のちに暗褐色になる。 実は…

妙高、黒姫、そして戸隠を舞台にした児雷也奇譚(2)

自来也が初めて登場するのは、感和亭鬼武(かんわていおにたけ)が文化3(1806)年に刊行した『自来也説話』(じらいやものがたり)です。この物語は大人気となり、様々なバージョンが登場します。1839年の美図垣笑顔(みずがきえがお)の合巻『児雷也豪傑譚…

ツワブキの花(とチョウ)

ツワブキ(石蕗、艶蕗)の花が今あちこちで咲いている。湾岸地域の造園業者に重宝されているようで、晩秋から初冬にかけて咲く黄色い花は殺風景な庭園に彩を添え、観賞用にとても人気があるようだ。ツワブキはキク科ツワブキ属に属する常緑多年草で、秋から…

歌舞伎「児雷也豪傑譚話(じらいやごうけつものがたり)」

熊坂長範は能の「熊坂」によって、児雷也は歌舞伎の「児雷也豪傑譚話」によって私たちに親しまれてきました。長範と児雷也の活躍する時代の違いが能と歌舞伎という異なる芸能ジャンルに反映されていることがわかります。 歌舞伎の原作は河竹黙阿弥で、『児雷…

ニシキギとキバラヘリカメムシ

紅葉し始めたニシキギに近づき、目を凝らすと、キバラヘリカメムシ(カメムシ目ヘリカメムシ科)が群がっていたのが昨年の10月中旬でした。そして、キバラヘリカメムシは4月から11月にかけて、あちこちに見られ、成虫で越冬し、ニシキギやマユミの仲間に群生…

『児雷也豪傑譚』の構図:三すくみの妙

自来也が初めて登場するのは、山東京伝や滝沢馬琴の弟子である感和亭鬼武(かんわていおにたけ)が文化3年(1806)に刊行した『自来也説話』です。読者を魅了したのが「三すくみ(さんすくみ、三竦み)」の構図です。三人が互いに得意な相手と苦手な相手を持…

妙高、黒姫、そして戸隠を舞台にした児雷也奇譚(1)

「中世の熊坂長範」が信濃町出身であるのに対して、「近世の児雷也」が激闘を繰り返す舞台は妙高山、黒姫山、そして戸隠山です。能の「熊坂」、歌舞伎の「児雷也」と対比することもできます。そこで、信越の怪人児雷也について述べてみましょう。 信越(北信…

シロスジアマリリスの花

アマリリスはヒガンバナ科ヒッペアストルム属の植物の総称。原種は中南米・西インド諸島に約90種があり、さらに数百種類の園芸品種があります。アマリリスは初夏にユリに似た基本的に六弁の大きい花を2 - 4個つけます。花の色は白・赤・薄紅・淡黄など。18世…

マユミの薄紅色の実

ニシキギ科のマユミ(檀、真弓、檀弓)の別名はヤマニシキギ(山錦木)。マユミは山地に自生するニシキギ科の落葉樹。近くの植え込みのマユミがコムラサキと同じように薄赤い実をたくさんつけています(画像)。マユミは実と種子だけでなく、紅葉も楽しむ庭…

ハギの白い花

シラハギ (白萩) 、シロバナチョウセンヤマハギ (白花朝鮮山萩) 、シロバナビッチュウヤマハギ (白花備中山萩) 、シロバナハギ (白花萩) 、シロハギ (白萩)等々、たくさんの名前があり、何がどのハギか皆目見当がつきません。湾岸地域にはヤマハギがあちこち…

雑談「熊坂長範」(4)落語

義経伝説ほど日本人の心を捉えて離さない伝説はありません。義経は文学、芸能のきっかけであり、目的でもありました。『源氏物語』が貴族文学の代表とすれば、武家文学の最初の代表が『平家物語』やその異本である『源平盛衰記』でしょう。義経文学は様々な…

ソライロアサガオの青い色

ソライロアサガオ(空色朝顔、学名: Ipomoea tricolor)は、ヒルガオ科の一年草です。アメリカソライロアサガオとも呼ばれますが、園芸では「西洋朝顔(セイヨウアサガオ)」と呼ばれるようです。 その種、蔓、花、葉はエルゴリンアルカロイドを含み、何世紀…

富士との重なり

昨日の東京は終日雨。でも、土曜の今朝は見事な日本晴れ。青い空と海の間に冬化粧の富士が見事に輝いている。雪富士を見ていると、なぜか私は妙高を思い出す。妙高も既に雪化粧しているが、いつも雪の富士と妙高が重なるのである。妙高山の麓で生まれた私の…

アゲラタムの花

さわやかな青や紫を中心に、小さく可憐な、アザミに似た花を咲かせるアゲラタムは熱帯アメリカ原産の、非耐寒性の多年草です。日本では冬越しできないため1年草として扱われます。使い勝手のよさが特徴ですが、矮性種と高性種の二系統があり、寄せ植えや前景…

雑談「熊坂長範」(3)神仏習合と幽玄性

熊坂長範を扱った現在能は「烏帽子折」で、「現在熊坂」とも呼ぶのに対して、夢幻能の「熊坂」は「幽霊熊坂」と呼ばれてきました。では、「烏帽子」と違って、「熊坂」はどのような曲なのでしょうか。旅の僧が美濃国赤坂で一人の僧に出会い、ある人の命日な…

アキアカネの謎

秋の陽光の中のアキアカネ(秋茜)はトンボ科アカネ属に分類されるトンボ。日本では普通に見られ、湾岸地域でもその数は多くなくても、元気に飛び回っています。俗に「赤とんぼ」と呼ばれてきたトンボです。 アカトンボと言っても、真っ赤になるのは、成熟し…

アキアカネの謎

秋の陽光の中のアキアカネ(秋茜)はトンボ科アカネ属に分類されるトンボ。日本では普通に見られ、湾岸地域でもその数は多くなくても、元気に飛び回っています。俗に「赤とんぼ」と呼ばれてきたトンボです。 アカトンボと言っても、真っ赤になるのは、成熟し…

雑談「熊坂長範」(2)「烏帽子折(えぼしおり)」の曲芸と身体性

大雑把に言うと、能には世俗世界を扱う現在能と、幽霊世界を描く夢幻能があります。「烏帽子折」は現在能、「熊坂」は幽霊能と分けることができます。「熊坂」のシテは亡者(=死人)であり、今は「幽霊熊坂」と呼ばれています。主人公は自分が幽霊でありな…

クズの花

湾岸地域の雑草中の雑草は何かと尋ねられれば、私なら迷わずクズとヤブガラシを挙げる。両者の優劣はつけ難いのだが、クズの方が目立つというのが私の印象。クズは蔓性の半低木で、北海道から九州までの山野で普通に見られる。基部は木質、上部は草質となり…

雑談「熊坂長範」(1)

熊坂長範は幸若舞、能、歌舞伎、御伽草子等々で取り上げられ、様々に語られ、演じられてきました。大泥棒の長範ですが、十か所以上の出身地があり、実在したかどうかさえ定かではありません。私は古典芸能など素人ですが、大学時代に能のクラブにいましたの…

ハナミズキの赤い実

ハナミズキ(花水木)は、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。ハナミズキの名は、ミズキの仲間で花が目立つことに由来する。また、別名のアメリカヤマボウシの名は日本の近縁種のヤマボウシに似ていることから。 ハナミズキは北アメリカ原産でアメリ…

サルスベリの花々

湾岸地域ではまだサルスベリの花を見ることができます。サルスベリは新梢を伸ばしながら枝先に花芽をつくり、夏から秋にかけて次々と開花します。枝の生育にばらつきがあるので、「百日紅」の名前通り、開花期が長期間となり、それで今でも花を見ることがで…

二つの言葉

科学や数学の理論を表現する言葉と宗教や倫理の信念を表現する言葉は違うのが普通ですが、どのように違うのでしょうか。科学や数学の言葉の代表例として古典力学とユークリッド幾何学の言葉を挙げることができます。ユークリッド幾何学の公理系、古典力学の…

オオモクゲンジの実

オオモクゲンジ(大木欒子)は中国原産で、ムクロジ科モクゲンジ属の落葉広葉高木です。別名はフクロミモクゲンジ(袋実木欒子)。モクゲンジより葉が大きいことから名前がつきました。本州中部以西に自生し、夏から秋にかけて、枝に黄色の小花を横向きに多…

ミモザの花

ミモザはフサアカシアとも呼ばれ、マメ科ネムノキ亜科の常緑高木です。本来ミモザはオジギソウを指す言葉です。昔はオジギソウなどをミモザと呼んでいたのですが、「ニセアカシア」が日本に伝わったとき、花の形が似ていることから、「ミモザアカシア」や「…

ヤナギバ(柳葉)ルイラソウの花

夏になると、道路脇や空き地で青紫の花を咲かせるのが「ヤナギバルイラソウ」。ルイラソウの一種で、爽やかな青紫色とシンプルで地味な花の形が、私のような老人にはなぜかしっくりします。花期は長く4~11月です。 ヤナギバルイラソウは一日花で、夕方には…

「知る」と「信じる」の違い:融合と棲み分けのスケッチ

多様な知り方、異なる知り方があり、同じものを違う風に知ることが許され、実際にそれが可能であり、さらに異なる知り方を統合することもできます。でも、多様な信じ方、異なる信じ方となると、同じ事柄を違う風に信じることが可能かどうかさえよくわかりま…