モッコウバラの花

 モッコウバラ(木香茨、木香薔薇)は中国原産の常緑性のつるバラです。4月から5月にかけて、アーチやフェンスに這わせた大株のモッコウバラはその花の数量に圧倒されます。花色は八重咲きの黄色、白色が主で、そのほかに黄色、白の一重咲きもあります。トゲがないことから扱いやすく、湾岸地域でも公園などでよく見かけます。

 モッコウバラの白花と黄花について、「スミレに似た芳香がある白花の八重咲き」、「黄花八重咲きの花はあまり香らない」という説明をよく見ますが、残念ながら私自身は芳香を感じたことがありません。

ウマノアシガタの輝く黄色と違って、褪せたような黄色がモッコウバラの特徴。ヒヨコの色のような、特徴ある黄色の花が黄モッコウバラ。八重のヤマブキの花に似て、黄色の色が薄くなり、時々黄色が抜けた白い花を見つけることができます。

 

万緑の季節

万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男

(夏の野山が緑の草木に溢れる中、わが子に白い歯が生えはじめてきた。)

 「万緑」は王安石の「万緑叢中紅一点」が出典と言われ、この句によって「万緑」は夏の季語となりました。「万緑」は草田男の第三句集の題名にもなり、彼の生涯の代表句。我が子の歯が生えはじめるという発育ぶりと植物の緑を重ね合わせ、地上のすべての生命力が「万緑の中や」に謳歌されています。 

 さて、「万緑叢中一点紅 動人春色不須多」(「万緑叢中に紅一点あり。人を動かす春色は須らく多かるべからず)の方ですが、訳すなら、「一面の緑なす草むらに一つだけ赤い柘榴の花が咲いている。人を感動させる春の景色は多ければよいというわけではない」。王安石は色彩感覚に富んだ詩を残しましたが、冬は白梅、春は紅の石榴を歌っています。この句は王安石の詩「咏石榴詩」として有名です。中村草田男の俳句の「万緑」を王安石の詩句に由来するとしたのは本人だそうですが、どうして夏の季語になったのでしょうか。王安石の詩では柘榴の実ではなく、柘榴の紅い花が詠われ、柘榴の花は春から初夏に咲きます。柘榴の花は「花石榴」として春の季語ですが、「柘榴」は柘榴の実を指し、秋の季語になっています。新緑と深緑の間が万緑で、温暖化の中で春か夏か微妙です。「万緑と紅一点」は日中で微妙に異なるようです。でも、俳句に季語などなくても構わないとすれば、何の問題もないのですが…

 ついでながら、王安石のこの詩はよく使われてきた「紅一点」の出典でもあります。

ハナビシソウとその仲間たち

 ハナビシソウ(花菱草)はケシ科の耐寒性一年草。その別名がカリフォルニアポピーで、カリフォルニア州の州花です。明治時代に渡来し、家紋の花菱に似ていることから、この名がつきました。花が大きく、ハナビシソウは花色が豊富にあり、特にオレンジ色の品種は綺麗でよく目立ちます。

 ケシ科ケシ属には50種ほどの花があり、栽培禁止品種を除き日本で普通に栽培され、野生化している花は、大きく分けてヒナゲシオニゲシアイスランドポピーの三種類です。ヒナゲシには帰化種のナガミヒナゲシや栽培種のヒナゲシがありますが、残念ながら(?)これらのどの花からもアヘンは取れません。

 ナガミヒナゲシは「長実雛罌粟」と書き、「実(み)が長く可愛いケシ」という意味。それにしても「雛罌粟 (ひなげし)」は難しい。虞美人草(ぐびじんそう)、アイスランドポピー、アマポーラ(スペイン語)、オリエンタルポピー、コクリコ(フランス語)と、呼び名も種類も実に多彩。

ハナビシソウ

アイスランドポピー

ナガミヒナゲシ

 

ツツジとシャクナゲの仲間たち

 4月下旬ガ近づき、周りはツツジの花が目立ち始めました。そんな中で、ツツジの仲間たちも花をつけ出しています。

 アザレア(Azalea)の別名は「アゼリア」、「西洋ツツジ」、「オランダツツジ」で、ヨーロッパで品種改良されたツツジ。19世紀初頭にベルギーを中心としたヨーロッパで室内観賞用の鉢物として改良された常緑性ツツジがアザレアです。交配親となったヤマツツジの仲間は中国、台湾、日本、ベトナムやフィリピンなどに約95種が分布しています。アザレアは、4月下旬から5月の中旬にかけて咲く春の花です。江戸時代に品種改良が盛んに行われ、品種改良されたツツジがヨーロッパに渡り、現在のアザレアが誕生しました。

 ツツジ科のロードデンドロン・アルボレウム(Rhododendron arboreum)は中国南部からブータン、ネパール、タイ、インドそれにスリランカに分布するヒマラヤのシャクナゲです。山地の林内に生え、高さは12メートルほどになります。春に赤色やピンク色、白色などの花を咲かせます。花は鐘形で、内側に黒色の蜜嚢と黒色の斑点があり、ネパールの国花です。

 既に何度も記してきたのがヒカゲツツジ(日陰躑躅)で、その別名は「サワテラシ(沢照らし)」。セピア色の花が咲くヒカゲツツジは厳密にはシャクナゲ。また、サッフォーはセイヨウシャクナゲの白花品種。サッフォーは白と紫の色の調合が見事で、華やかな色合いが多いシャクナゲの中では年寄り向き。

 さらに、カルミアの別名はアメリシャクナゲ(ハナガサシャクナゲ)。カルミアは北アメリカからキューバにかけて7種が分布する常緑樹で、ツツジシャクナゲの仲間。コネチカット州の州花です。大正4年東京市長アメリカにサクラを寄贈した返礼として、ハナミズキなどとともに贈られてきました。普及したのは戦後で、有明でも簡単に見ることができます。

アザレア

アザレア

ロードデンドロン・アルボレウム

ヒカゲツツジ

サッフォー

カルミア

 

マツバウンラン(松葉海蘭)の花

 葉の形が松葉、花がウンランに似ていることから、「マツバウンラン」の名前がついた。マツバウンランアメリカ原産で、1941年に京都市で初めて採集された帰化植物。現在では北関東、北陸地方以西に普通に見られるようになった。直径1cmほどの紫色の仮面状花を穂状につける。

 マツバウンランゴマノハグサ科一年草、あるいは二年草。豊洲ぐるり公園(豊洲新市場の周りの公園)の斜面のあちこちで花をつけている。マツバウンランの花は相当沢山あっても、うるさいと感じないところがいいところである。

マツバウンラン、ムラサキウンラン=リナリアヒメキンギョソウツタバウンランはいずれも花の形がよく似ている。

 

ベニバスモモの葉と花と

 ソメイヨシノより小ぶりで、紅葉が花とともに出てくるのがベニバスモモの特徴点。ソメイヨシノは花が散り始める頃に緑色の葉が出始め、いわゆる「葉桜」に移り変わっていく。一方、ベニバスモモは花が咲く頃から葉が出始め、しかもそれが紅葉で、赤みがかった葉のために木が全体的に赤っぽく見える。ベニバスモモの葉は紅色のカラーリーフにある。別名はアカバスモモ。花は白いが、葉が赤いので、遠目にはピンクの花が咲いているように見え、3月中頃から咲き始める。

 ベニバスモモの原産地はアジア西南部、コーカサスで、葉がついている間は、長く紅葉を楽しむことができる。花はサクラの仲間よりも小ぶりだが、芽出しとほぼ同時に花をたくさんつけ、美しい。

 

イヌビワの花嚢

 実がビワの実に似ているが、ビワより不味いことからついた名前が「イヌビワ(犬枇杷)」。「ビワ」と言っても、イチジクの仲間。イチジク渡来前、日本ではイヌビワを「イチジク」と呼んでいた。花期は晩春で、雌雄異株。葉の付け根についた雌株の花嚢(かのう)は、秋に赤色から黒紫色へと変化し、果嚢(かのう)となる。果嚢は秋に完熟する。

 雌株の花嚢が果嚢(かのう)になり、これがいわゆるイチジクの果実。「無花果(イチジク)」の漢字は、花が咲かずに実をつけることに由来する。日本語ではこれに「イチジク」という熟字訓(熟字、熟語に対する訓読みのこと)を与えている。

 イチジクには「雄花」と「雌花」があり、どちらも花嚢の内側に「小果」と呼ばれる無数の花が咲く。雌花の小果は膨らんで熟し、これが私たちの食べるイチジクの実。亜熱帯地方で栽培されるイチジクは、雄花のおしべの花粉を受粉することで熟すものが主流だが、日本で栽培されているイチジクは雌花しかつかない雌の木のみで、受粉しなくても熟すタイプ。受粉しないので、実が熟れても種はできない。

 イヌビワもイチジクと同じように、雌雄異株で、花は果実状で、外からは見えない集合花(隠頭花序)。実は秋に熟すると濃い紫色になる。食感はイチジクに似ている。イヌビワは枝の葉柄の付け根にイチジク形の花嚢をつける。袋状に包み込まれ、外から見えない花から花へ花粉をやりとりするのはイヌビワコバチと呼ばれる昆虫。つまり、雄株につく雄花嚢の内側には、入り口に近いところに雄花があり、奥の方の花の大部分は虫えい花。まず、イヌビワコバチは雄花嚢の中に入り、奥の方の花の柱頭に産卵する。幼虫が孵化するとその刺激で花の子房が肥大して虫えい花となり、幼虫はこの花を食べて生長する。やがて、コバチが成虫になって花嚢から飛び出す頃、入り口の雄花も成熟し、ハチの体に花粉をつけて雌花嚢へ運んでもらう。これが無花果イヌビワの適応のカラクリ。

*画像はイヌビワの雄株の花嚢

**私はまだイヌビワの果嚢を知らない。