シダレエンジュの花

 既にマメ科のエンジュ(槐)について記しました。エンジュは中国では高貴な木で、周代の朝廷の最高位にある三公がそれぞれ三本の槐(えんじゅ)の木に向かって座ったことから、三公の位を象徴する木と言われてきました。エンジュの枝垂れ品種のシダレエンジュ(枝垂槐)はその最高種とされ、庭木として珍重されてきました。さらに、学問と権威のシンボルとされ、最高の官位は「槐位(かいい)」と称され、日本には古くに渡来しています。

 公園のエンジュの木に比べると、画像のシダレエンジュはとても立派で、随分と印象が違います。シダレエンジュの別名は「リュウノツメエンジュ(竜爪槐)」。シダレエンジュは枝先に複総状花序をだして、マメ科に特有の、淡い黄白色の蝶形花を咲かせます。花の後につける実は豆果で、数珠状にくびれています。シダレエンジュの花色はクリーム色。花を見れば、マメ科だとすぐわかります。和名の通り、枝が枝垂れるように生長します。夏にクリーム色の花を円錐花序につけ、秋には黄緑色の豆果をつけます。

*「槐」の読みは音読みが「カイ」、訓読みが「えんじゅ」。日本語だけの訓読みで「えにす」、「えんじ」、「さいかち」の3種類があるが、何を指すかはよくわからない。漢字の意味は「さやの中に数珠のような丸い種子が連なる木」で、マメ科の特徴を表している。

(豆果)

 

バーベナの白い花



 何とも素朴で、飾り気のない花は暫し夏の暑さを忘れさせてくれます。熱中症寸前の老人は子供のように、雪が白くないだけでなく、白い色がなくなったなら、この世界はどんな風になるか、などとつい妄想してしまいます。「白のない世界」は「色のない世界」、つまり「白黒の世界」なのかと言えば、単純にそうだという人はいない筈です。

 バーベナ(美女桜)はクマツヅラ(バーベナ)属の園芸品種の総称です。「しばざくら(芝桜)」のような花が、春から秋まで咲き続けます。私は画像のような白色のバーベナが好きです。別名で「びじょざくら(美女桜)」とも呼ばれます。匍匐性をもつ系統が多く、グランドカバーに使われ、主役にはなりませんが、その白色は私を飽きさせません。バーベナの白い花は私を惹きつけるというより、私を解き放つのです。

ノリウツギミナズキの白い花

 ノリウツギミナズキによく似ているのがアジサイ科のアナベル。その別名は「アメリカアジサイ」、「セイヨウアジサイ」、「アメリカノリノキ」で、原産地はアメリカ。アナベルもアジサイの仲間の落葉性低木で、初夏に大きな花が開花します。花色は、咲き始めはグリーン、咲き進むと白くなり、夏を過ぎると、再びグリーンに変化します。

 アジサイやガクアジサイは日本原産の種が改良されたものですが、近年真っ白で非常に大きな花房のアナベルや、円錐形の花房とカシワのように深く裂けた葉をもつカシワバアジサイが人気を集めています。

 ノリウツギの園芸種の一つがピラミッドアジサイ(和名はノリウツギミナズキ)。ノリウツギの花のすべてが装飾花になったのがピラミッドアジサイと考えると、わかりやすいでしょう。遠目にはアジサイのアナベルそっくりでも、カシワバアジサイやアナベルとも違う…でも、その違いは実に微妙。

 今年のアジサイは既に終わりましたが、ノリウツギミナズキの白い花はまだ元気です。

 

ミミズの死

 暑さが増す今の時期、路上にミミズの死骸が多く、気になります。いくつかの要因が重なった結果の大量死と考えられています。

 ミミズは皮膚呼吸をするため、皮膚が常にしめっていないと生きられません。でも、水分が多すぎても、酸素不足で窒息してしまいます。ミミズは湿度や温度の許容範囲がとても狭い生き物です。特に、夏は35度を超える高温になると、死ぬことが多く、直射日光の当たるアスファルト上では、短時間で体が乾いてしまいます。実際、今は何処でも簡単に35度を超えています。

 多くの場合、「雨上がり後の晴れて暑くなったタイミング」で路上に死骸が目立ちます。雨で土の隙間が水で満たされると、皮膚呼吸をしているミミズは酸素不足になり、地上へ逃げようとします。また、土の温度や含水量が一定の範囲を超えると、ミミズは「今いる場所が危険」と判断し、土の外へ移動します。良い環境を求めて移動するうち、舗装路やコンクリートの上に出てしまうと、土に戻る穴が無く、気温上昇と乾燥で短時間に干からびてしまいます。路上で多数が同時に死んでいるように見える「集団死」も、こうした移動の結果と考えられています。

 日本の多くの地域では、梅雨明け前後の7月下旬は梅雨末期などの強い雨で土壌が過湿になりやすい、雨のあと急に晴れて真夏日・猛暑日になりやすい、地表面やアスファルトの温度が一気に上がり、乾燥も激しく、この「雨で地中が苦しくなる」タイミングと「その直後の高温と乾燥」が同時に起こると、地表に出たミミズが一斉に干からびるため、路上で死骸が目立つと考えられます。地球の温暖化、異常気象はミミズにも厄介な災難なのです。

 

ハマユウの花

 ハマユウ(浜木綿、Crinum asiaticum)はヒガンバナ科の多年草。ハマユウの「ユウ」は、白い花弁が神事で用いられる木綿(ゆう)のように白く垂れることからきている。私のような団塊世代は「浜木綿子」を思い出してしまう。開花時期は7月~9月。ハマユウはインドネシアとスマトラ原産で、花は夜中に満開になり、芳香でスズメガを呼び寄せる虫媒花。花だけをみると、シロバナヒガンバナによく似ている。

 ハマユウには真夏の青空と海がよく似合う。ハマユウの根元を良く見ると、大きな実がなっている。子房が肥大し、球形の果実になったもの。重くて地面についている。中には直径が2、3㎝ほどの種子が複数含まれている。熟すると落ち、台風の時など、海水がやってきたときに運ばれて別天地で発芽する。種子には海水に浮き、海水が浸み込まずに運ばれる仕組みがある。実から出た種子は海流に乗って主に浜辺に分布していく。

 ハマユウは日本の固有種で、1681年の『花壇綱目』に記述があり、江戸時代には既に園芸に利用されていた。根際から生える葉は長さ30~70㎝、幅4~10㎝の幅の広い披針形で、先が尖り、厚みと艶がある。花は直径6~8cmで、6枚の花被片は長さ7~8cm、幅5~8mmと細長く、下部は合着して長さ5~6㎝の筒状になり、先端部はばらばらに反り返る。雄しべは糸状の6本で、花糸の基部は花筒喉部に合生し、花糸の上部は赤紫色になり、黄色の葯がT字状につく。

 正式和名は「ハマオモト」で、浜に生育し、葉が厚くオモトに似ていることに因ります。全草にアルカイド(alkaloid)を含み有毒です。

*宮崎県の県花、横須賀市、三浦市の市花。

 

オニグモ

 オニグモ属のオニグモ(Araneus ventricosus)は日本では北海道から沖縄まで広く分布し、体はずんぐりして腹部が大きく、茶色〜黒褐色で、鬼のような容姿です。垂直な円形のクモの巣を作り、夜になると網の中心に出てきて獲物を待ちます。昼間は近くの葉裏や隙間に隠れていることが多いとのことですが、画像は昼間のオニグモです。民家の軒先や公園の木の間などで、よく見られます。画像のオニグモも歩道で見かけたものです。今の時期はちょうどオニグモの活動期です。

 全体が褐色〜灰色の毛で覆われたずんぐりした体、黒と白のシマ模様の脚、腹部の前方の両肩にある肩状突起と呼ばれる円錐形のコブがあり、鬼の角のように見えることからオニグモの名がつけられました。日本では北海道から琉球列島まで広く分布し、人家周辺、神社や公園、外壁と植え込みの間などに大きな垂直の円網を張り、夜行性で、昼間は網の近くでじっとしています。毒はありますが、ハチに刺された程度で、人に積極的に危害を加えることはなく、益虫とされています。

 

なぜモミジアオイは「草」なのか?

 タイトルの問いは「草とは何か」と言い換えてもいいでしょう。いずれであれ、何とも哲学的な問いに聞こえますが、それを今花が咲いているモミジアオイ(紅葉葵、Hibiscus coccineus)で考えてみましょう。画像のモミジアオイは3mほどあり、たくさんの花をつけていて、木のように見えます。

 形態学的な基準に沿って、木本性か草本性かを判断しましょう。

1.モミジアオイは冬季に地上部が完全に枯死します。木本ならば地上部の茎、枝が越冬し、維持されるはずですが、モミジアオイは毎年地上部が消失します。

2.モミジアオイの茎は木質化しません(草本性の茎)。茎は直立しますが、木本のような多年性の木質部を形成しません。

3.モミジアオイは株分けで増える宿根草の繁殖様式を持っています。木本植物では通常「株分け」は行わず、挿し木、接ぎ木が主になります。

4.モミジアオイは分類学的に多年生草本で、アオイ科フヨウ属のモミジアオイは木本のムクゲ(木槿)やフヨウ(芙蓉)とは異なり、草本です。

 モミジアオイは明治初期に渡来した北アメリカ原産のアオイ科フヨウ属の宿根草。7月から9月頃までの夏の季節にフヨウによく似た大輪の赤い花を咲かせます。花がハイビスカスやタチアオイに似ているため、よく間違われますが、モミジアオイは花弁の根っこが細くなっていて、花弁の間に隙間が広くできるのが特徴です(画像)。

 草丈は大きい物で2m近くになり、茎も草花としてはとても太くなります。名前は星形の葉の形がモミジに似ていることからつけられました。別名は「紅蜀葵(こうしょくき)」。

 近年、葉の形が異なる「タイタンビカス」というモミジアオイとアメリカフヨウとの交配種が生まれ、赤、ピンク、白などの大振りの花が見られるようになりました。

*タイタンビカスはモミジアオイとアメリカフヨウとの交配種です。アメリカフヨウはフヨウによく似ていますが、フヨウ(やムクゲ)が木なのに対し、アメリカフヨウは草です。「草のモミジアオイ」と「草のアメリカフヨウ」の交配種が草のタイタンビカスです。とはいえ、花だけ見ていたのでは植物名だけでなく、草か木かさえよくわかりません。