クズの花

 湾岸地域の雑草中の雑草は何かと尋ねられれば、私なら迷わずクズとヤブガラシを挙げる。両者の優劣はつけ難いのだが、クズの方が目立つというのが私の印象。クズは蔓性の半低木で、北海道から九州までの山野で普通に見られる。基部は木質、上部は草質となり、長さ10mに達し、時には周りの木を蔓で覆ってしまう。根は長大で、多量の澱粉を蓄え、主根は長さ1.5m、径約20cmに達する。

 紅紫色の花の開花時期は7、8月から9月末頃までだが、まだ咲いているものもある。「葛」は、秋の七草の一つで、万葉集古今和歌集にも登場し、古くから人々に親しまれてきた。また、根を乾燥した葛根(かっこん)は漢方で解熱薬として利用されてきた。クズの花は葉の脇から総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、蝶形の花をたくさんつける。花には甘い香りがある。夏から秋にかけて、紅紫色の花が穂のように咲き、その後結実してエダマメのような実をつける。大和の国(奈良県)の国栖(くず)が葛粉の産地だったからの命名で、漢字の「葛」は漢名から。

 クズの根からつくるのが葛粉。白い葛粉ができるまでは、根を潰し、水に入れて濾し、その後も何回も水をかえてくず粉を沈殿させ、その粉を乾燥させるという手間がかかる作業が必要。だが、今では手作りの葛粉をつくる家庭はなくなり、本葛粉は減少している。

*奈良の吉野地方では本葛採集用に選抜されたクズを長年栽培していて、混じり気のない葛粉100%のものは「本葛」と呼ばれる。

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