クズの花

 湾岸地域の雑草の中で何が目立つかと問われれば、私なら迷わずクズを挙げる。だが、空き地が減るとともに、クズも減り出している。クズは秋の七草で、8月末頃から花を咲かせる。今年になって昨日初めてクズの花を見た。クズの花は高所にある場合が多く、目立たない。細長い穂に小さいツボミをたくさんつけて、下から少しずつ咲き上がる。穂の上部が咲き始めた頃には裾の方から豆ができてくる。

 クズは北海道から九州までの山野で普通に見られる。基部は木質、上部は草質となり、長さは10mを超え、時には周りの木を蔓で覆ってしまう。根は長大で、多量の澱粉を蓄え、主根は長さ1.5m、径約20cmに達する。

 「葛」は『万葉集』や『古今和歌集』にも登場し、古くから人々に親しまれ、根を乾燥した葛根(かっこん)は漢方で解熱薬として利用されてきた。大和の国(奈良県)の国栖(くず)が葛粉の産地だったからの命名で、漢字の「葛」は漢名から。クズの根からつくるのが葛粉。白い葛粉ができるまでは、根を潰し、水に入れて濾し、その後も何回も水をかえてくず粉を沈殿させ、その粉を乾燥させるという手間がかかる作業が必要。

*奈良の吉野地方では本葛採集用に選抜されたクズを長年栽培していて、混じり気のない葛粉100%のものは「本葛」と呼ばれる。

**クズは家畜の飼料や土壌流出防止のためにアメリカに渡り、野生化。今ではアメリカの侵略的外来種になっている。