アキアカネの謎

 秋の陽光の中のアキアカネ(秋茜)はトンボ科アカネ属に分類されるトンボ。日本では普通に見られ、湾岸地域でもその数は多くなくても、元気に飛び回っています。俗に「赤とんぼ」と呼ばれてきたトンボです。

 アカトンボと言っても、真っ赤になるのは、成熟したオスだけ。未成熟のオスやメスは黄色っぽい色をしています。この色の変化は、オモクロームという色素の酸化還元反応によって起こります。オモクロームは、還元型で赤色、酸化型で黄色になります。未成熟のオスやメスの体内ではオモクロームが酸化型に、成熟オスでは還元型になっているのです。オモクロームの酸化還元反応は可逆的で、黄色の未成熟オスやメスでも還元剤を入れると、体色が赤色に変化します。赤い色は婚姻色で、成熟したオスであることのアピールだと考えられてきました。でも、還元型オモクローム色素(赤色の色素)を多く持つことは、日向で縄張りを守る際に受ける紫外線による酸化ストレスを軽減するためという仮説も出ています。

 アキアカネは、平地で秋になると群れを成して現れるため、羽化自体が秋に一斉に起こっていると思われるかもしれません。でも、すべてのアキアカネは5月から6月頃に羽化を済ませ、成虫になると標高の高い地域で夏を過ごします。アキアカネは、体温の排熱能力が低く、そのため、涼しい高地に移動するのです。高所で夏を過ごしたアキアカネは気温が下がった秋に平地に移動し、広場などで群れをなして飛び回ります。

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