ベロニカ(Veronica)の花たちの繋がり

 今近くの公園は群れをなすオオイヌノフグリに溢れていて、青い小さな花の草原になっている。そのオオイヌノフグリから似た者同士を探り、辿っていくと近縁の植物たちが浮かび上がってくる。それがベロニカと総称されるオオバコ科クワガタソウ属の多年草。原産地はヨーロッパ~アジアで、200~300種が分布し、日本でも20種ほどが自生している。

 インカナ種のベロニカの別名は「シルバー・スピードウェル(silver speedwell)」で、種小名のincanaはラテン語で「白っぽい」、「灰色がかった」を意味している。和名はヒメトウテイランで、白っぽく灰緑色をしたシルバーリーフ。

 クワガタソウ属には上記のベロニカの他に、オオイヌノフグリ、ベロニカ・オックスフォードブルー、オオカワヂシャなどが含まれ、実に多彩。ベロニカの仲間は数多く、種類によって姿形がまるで異なる。大きく分けると、穂のような花になるものと、這い性で、小花を咲かせるタイプになる。這い性種の代表のペドゥンクラリスの改良品種がオックスフォードブルーで、オオイヌノフグリによく似て、春に小さな一重の花を咲かせる。

 オオカワヂシャ(大川萵苣)はクワガタソウ属の植物。日本在来のカワヂシャが準絶滅危惧種であるのに対し、オオカワヂシャは繁茂している(画像)。その上、オオカワヂシャはカワヂシャと交配してホナガカワヂシャという新種まで作り出している。「カワヂシャ」の名の由来は若葉がチシャのように食べられることから「川に生えるチシャ」と呼ばれたことに由来。レタスはヨ-ロッパが原産で、現在の結球したレタスではなく、葉や茎を食べる野菜として中国経由で、「チシャ」の名前で日本に伝わった。一方、品種改良され、結球したレタス(玉ヂシャ)が江戸末期アメリカ経由で入ってきて、今ではこれが「レタス」と呼ばれている。

 日本にもともとあったのはオオイヌノフグリより小さい花をもつイヌノフグリ。明治に入り、オオイヌノフグリが日本に帰化。その結果、在来種のイヌノフグリは駆逐され、今では絶滅危惧種。「オオイヌノフグリ」とは驚くような名前だが、イヌノフグリに似ていて、それより大きいためにつけられた。別名はずっと優雅で、「天人唐草」。イヌノフグリを図案化した唐草模様が天人唐草と呼ばれていて、そこから、オオイヌノフグリも「天人唐草」と呼ばれるようになった。次は「瑠璃唐草」。瑠璃色はラピスラズリのような、少し紫の入った鮮やかな青。

 オオバコ科クワガタソウ属の植物は「ベロニカ」と総称され、ベロニカスピカ―タ、トウテイラン、マダムマルシア、オックスフォードブルー、オオカワヂシャなど多彩な植物が含まれていて、植物としての存在の面白さが溢れている。

イヌノフグリは在来種。牧野富太郎が生まれる以前から「イヌノフグリ」と呼ばれていた(『草木図説』)。1887(明治20)年東京で牧野はコバルトブルーの花が土手一面に咲いているのを見つけた。既知のイヌノフグリの近縁種で、大型であることから、彼はオオイヌノフグリ命名した。

ベロニカ・スピカ―タ

ベロニカ・グレース

オックスフォードブルー

カラフトヒヨクソウ

マダムマルシア

オオカワジシャ