ガクアジサイの花(1)

 ウクライナの平地には一面に広がるヒマワリが似合うが、アジサイは鎌倉のような起伏のある土地に似合う。その鎌倉に住んだ鏑木清方は随筆家としても有名で、紫陽花を愛した様子が『紫陽花舎随筆』に描かれている。彼は若い頃から文藝に親しみ、泉鏡花とも親交があった。泉鏡花には「紫陽花」という短編がある。それは擬古文で書かれており、何とも耽美的、静謐で、美しい。とはいえ、水辺の花がどうして紫陽花なのかは私には解せぬまま。

 ところで、俳句の季語となると、紫陽花には様々な呼び名がある。「紫陽花、あぢさゐ、あじさい、四葩(よひら)、額の花、七変化」などで、最後の三語は紫陽花の特徴を読み取ったものである。

正岡子規 紫陽花や きのふの誠 けふの嘘

三橋鷹女 老境や 四葩を映す 水の底

今井千鶴子 淋しくて 淋しくて雨 額の花

 「額の花」は「額紫陽花」の省略形、四葩(よひら)は紫陽花の異名。紫陽花の花の色の七変化によって、嘘や誠が目まぐるしく変わることを詠んだのが子規の句。

*一般的にヤマアジサイの装飾花は小ぶりで華奢、ガクアジサイの装飾花は、大きく華やか。アジサイの花色は土壌によって変わるが、白花には色素がなく、変化しない。