ガクアジサイの花

 ウクライナの平地にはヒマワリが似合うが、アジサイは鎌倉の起伏のある土地に似合う。その鎌倉に住んだ鏑木清方は随筆家としても有名で、紫陽花を愛した様子が『紫陽花舎随筆』に描かれている。彼は若い頃から文藝に親しみ、泉鏡花とも親交があった。泉鏡花には「紫陽花」という短編がある。それは擬古文で書かれており、何とも耽美的で、静謐かつ美しい。とはいえ、水辺の花がどうして紫陽花なのかは私には解せぬまま。

 ところで、俳句の季語となると、紫陽花には様々な呼び名がある。「紫陽花、あぢさゐ、あじさい、四葩(よひら)、額の花、七変化」などで、最後の三語は紫陽花の特徴を読み取ったものである。

 

正岡子規 紫陽花や きのふの誠 けふの嘘

三橋鷹女 老境や 四葩を映す 水の底

今井千鶴子 淋しくて 淋しくて雨 額の花

中川悦子 野仏の 顔を隠して 額の花

 

 「額の花」は「額紫陽花」の省略形、四葩は紫陽花の異名、七変化も紫陽花の別名である。

 紫陽花の花の色の七変化によって、嘘や誠が目まぐるしく変わることを詠んだのが子規の句。「額の花」ではなく、「額紫陽花」だと、それだけで字余り。