紅白混淆のバラ

 ランカスター朝の国王ヘンリー6世に対し、ヨーク公リチャードが王位を主張して1445年に決起したのがバラ戦争です。1485年のヘンリー7世の即位によるテューダー朝成立までの30年間、この内乱が続きました。ヘンリー7世はランカスター家の血をひいていましたが、1486年にヨーク家のエリザベスと結婚し、両家の和解が成立しました。

 「バラ戦争」という名前はランカスター家が紅いバラを、ヨーク家が白いバラを紋章としたことに由来するとされます。両家の争いを収めたテューダー朝の紋章「テューダー ローズ」は、花弁の外側が紅色、内側が白色のバラで、ランカスター家とヨーク家の融合を表しています。

 バラ戦争の終結によって、テューダー朝が樹立されます。ランカスター家の赤バラにヨーク家の白バラが取り込まれたモチーフが組み合わされ、「テューダー ローズ」が紋章となります。この紋は、テューダー朝最後の女王エリザベス1世の肖像画にも描かれ、現代でもイギリスの国章、サッカーのイングランド代表のエンブレムなどになっています。

 「テューダー ローズ」という名前の実在するバラはありませんが、オールドローズ系の「ヨーク アンド ランカスター」という名前のバラがあります。白から淡いピンク、ショッキングピンクの不規則な絞り模様のバラです。

*ヨーク アンド ランカスターは白地にピンクのストライプが入るのですが、はっきりと咲き分けない場合もあります。でも、古典的なダマスクローズとしてこぼれるように咲く姿が印象的です。画像は最初の二枚がダマスクローズ、最後の一枚がヨーク アンド ランカスターに似た色合いをもつピエール ド ロンサールと呼ばれるバラです。