満開の二つのバラ

 ロサ・ダマスケナはダマスクローズのことで、「バラの女王」と呼ばれる交雑種。ダマスクローズは古くから人々に愛され、ローズオイル、香水、アロマキャンドルなどとして利用されてきました。ダマスクローズは16世紀にダマスカスからヨーロッパに持ち込まれたとされています。

 春にそのダマスクローズが道端でたくさんの花をつけ、香りを放っていたのを昨年記しましたが、今年もたくさんの花が開いていて、周りには良い香りが漂っています。そのすぐ近くではナニワイバラも密に花がついて、満開です。

 ナニワイバラとノイバラ、ハマナス(浜梨)の画像を見比べれば、それぞれの花はよく似ていて、花だけでは区別できそうもなく、互いに野生に近いバラの仲間であることが納得できます。実際、ノイバラ、ナニワイバラ、ハマナスの交雑種がいくつも生まれています。

 柳宗悦が強調した「用の美」は生活の中にある美で、その典型例が民芸品としての陶磁器でした。この民芸美に似ているのがダマスクローズやナニワイバラの美です。例えば、最後の画像のピエール・ド・ロンサールはバラの園芸品種の一つで、マリー・ルイーズ・メイアンが作出したもので、フランスを代表する詩人ピエール・ド・ロンサールにちなんで名づけられました。世界バラ会連合が3年に1回開催する世界バラ会議で選出する「世界中で愛されている名花」として2006年の大阪大会で「世界バラ会連合殿堂入り」を果たしました。「緑がかった白に中心がピンクという花色にオールドローズを思い浮かべるカップ咲きの大きめのクラシカルな花が数多く咲き誇る」と説明される花姿が芸術美であるとすれば、それと対照的なのがダマスクローズやナニワイバラの美で、私にはいずれも生活美に思えるのです。