バラとキク

 キクは7~8世紀に中国から渡来しましたが、バラは日本に自生していました。バラの先祖を辿っていくと、アジアから日本にかけての自生種8種類に行きつきます。バラの原種のうちの3種類、ノイバラ、テリハノイバラ、ハマナスは日本原産です。

 キクの花には日本で古くから親しまれてきた「和菊」と、西洋が原産地の「洋菊」との2種類があります(和菊といっても上記から日本原産ではありません)。洋菊の代表の一つがスプレーマム(スプレー菊、Dendranthema grandiflorum)で、1本の茎から枝分かれしてたくさんの花をつけます。アメリカで品種改良され、スプレー状に花をいくつも咲かせるため、湾岸地域でもあちこちで見ることができます。

 ところで、ベネディクトの『菊と刀』とエーコの『薔薇の名前』を混ぜ合わせれば、「菊と薔薇」とでもなるのでしょうが、そんなことは当然できません。でも、二つの植物となると、どうでしょうか。かつてはキクとバラは異なる本質をもった植物と考えられていましたが、進化論や遺伝子工学の進展によって、生物は進化し、その遺伝子を操作することが可能になりました。キクとバラは系統的に遠縁のため、直接の交雑はできないのですが、遺伝子組み換えによって、青いキクの花が生まれ、青いバラの花も誕生しています。ものを操作し、変えることができるという錬金術的な夢が生物学や医学を推進する力の一つになっていて、その結果として「菊と薔薇」の「と」がとれて、「菊薔薇」がいずれ生まれることになるでしょう。とはいえ、私の夢は今のところ妄想に過ぎません。

*最初の二枚の画像はスプレーマム

**「野薔薇」と「野菊」はよく聞く名前だが、それに対応するバラとキクの一例がノイバラとノコンギク

***最後の二枚の画像は園芸種のバラとキク

ノイバラ

ノコンギク