梅の香り

 梅の花は春の象徴的で、『古今和歌集』には梅の花や香りが詠われています。

 

折りつれば 袖こそにほへ 梅の花 ありとやここに 鶯の鳴く

梅の花を折ったので、その移り香で私の袖は格別に匂う。そこに梅の花があると思うのか、私の袖に鶯が来て鳴いている。)

散りぬとも 香をだに残せ 梅の花 恋しき時の 思ひ出にせむ

(散ってしまうとも、せめて香りだけでも残せ、梅の花。お前が恋しい時は、その香りで思い出そう。)

 

 梅は奈良時代に中国から渡来しましたが、桜は日本の野山に咲いていました。『万葉集』で詠まれた梅と桜の歌の数は、梅は120余首、桜は40余首。当時はまだ白梅のみで紅梅は平安時代からのものです。桜より梅の方が好まれていたようにみえますが、これは舶来の梅への好奇心に負うところが大きいようです。平安時代になると、桜が次第に優位になっていきます。一方、梅は香りが注目され、また、色の華やかな紅梅も脚光を浴びるようになります。そして、「梅は香り」、「桜は色彩」が愛でられるようになります。