春のタンポポ

 あちこちでタンポポ花が今年も立派に咲き出している。春を告知するかのようなタンポポの花は黄色が眩しく、日常の中に春を押し込んでくれる。実は、タンポポの花と呼ぶのは花の集り。外側の花びら1枚を引き抜いてみると、花びらにめしべとおしべがついている。根元には子房(種ができるところ)もある。つまり、花びら1枚が、一つの花であり、一つの花に見えたタンポポは200個程の小さな花が集まったもの。だから、タンポポの花は集団の美。それぞれの花に花粉が付いて受精すると、種子ができる。種子のように見えても、実際は果実(痩果)。タンポポの場合、子房の外側に萼があり、その先端が伸びて、冠毛(綿毛と呼ばれているもの)になる。冠毛が風を受けると空中に舞い、果実(種子)を遠くまで運び、成育する場所を貪欲に広げていく。

加藤楸邨 たんぽぽの ぽぽと綿毛の たちにけり

星野立子 たんぽぽの 皆上向きて 正午なり

俵万智 たんぽぽの 綿毛を吹いて 見せてやる いつかおまえも 飛んでゆくから

 最後の画像はフタマタタンポポ属のモモイロタンポポで、その別名は「センボンタンポポ」。ヨーロッパ原産で、大正時代初期に渡来し、タンポポそっくりのピンクの花を咲かせる。花も葉もやはりタンポポそっくりで、花の後にはタンポポと同じく綿毛ができる。