ヒイラギモチ(セイヨウヒイラギ)は雌雄異株ですが、単為結果するため、雌株だけで実がつきます。ヒイラギモチはヒイラギとモチノキが一緒になった名前ですが、クロガネモチも同じモチノキ科で、若い枝や葉柄が黒紫色であることや、葉が乾くと鉄色になることからクロガネモチと呼ばれています。
クロガネモチは都市の環境に強く、公園樹や街路樹として人気が高く、湾岸地域は雌株のクロガネモチばかり目立ちます。雌雄異株の植物では雌株の花に雄株の花粉がついて初めて実ができます。では、雌株だけ(あるいは雄株だけ)が植裁されている場合はどうなるのでしょうか。クロガネモチも雌雄異株で、単為結果、つまり雄株の花粉がなくても、雌株だけで赤い実がつくのでしょうか。赤い実をつけるクロガネモチばかりで、雄の木を見落としているのかも知れないのですが、どのクロガネモチも雌の木ということになれば、雄の木がないので、そもそも紅い実をつけることができるのかという疑問が出てきます。
樫の木の一種では数百メートルも離れた樹木からも花粉が運ばれます。クロガネモチでも、随分離れている雄株から花粉が運ばれていると考えられますが、ヒイラギモチの場合、種子を全く含まないのに紅く熟す実もあること、また人工授粉に頼らなくても、かなりの実をつける個体があることが報告されています。
このようなことから、クロガネモチを含むモチノキ属では、結実そのものに花粉が必ずしも必要ないことになりそうですが、それでは雄の木の役割は何かわからなくなり、雌雄の割合(性比)など無意味になり、終には雌雄異株ではないことになってしまいます。
こんな面倒なことは脇に置き、冬の青空の中、赤と緑の組み合わせを楽しみましょう。
(ヒイラギモチ)