白い花が満開のヒイラギモクセイ(柊木犀)

 二度咲きの金木犀の花は終わったが、よく似た、上品な香りで目を向ければ、ヒイラギモクセイの5mを優に超える、白い花をつけた木が見える。人の眼はいい加減で、関心がなければ、周りの植物など無視してしまう。これほど大きなヒイラギモクセイの存在になぜ気がつかなかったのかと訝りながらも、その香りに加え、緑の堅い葉とその間の白い花の造形に圧倒され、暫し時を忘れる。そして、色づき始めた木々の中で、緑色の葉、白色の花、薄い灰色の幹のヒイラギモクセイは秋の風景に馴染み、溶け込むというより、孤立していることに気づくのである。

 ヒイラギモクセイはモクセイ科モクセイ属の常緑小高木。ヒイラギ(柊)とギンモクセイ(銀木犀)の交雑種。花期は10月から11月で、親譲りの良い香りのする白い花を開かせる。花弁は4枚に分かれ、ギンモクセイの性質が強く出ているようで、反り返らない。雄株しかないので、花はすべて雄花。2本のおしべと、中心部に痕跡的なめしべがのぞく(画像)。日本では雄株が中心であるため自生はない。葉の大きさはキンモクセイ程度だが、ヒイラギのように縁にトゲがあり、葉は厚い。