子供の頃、どの家の庭にもあったのが桐や柿の木で、桐の花も柿の実も珍しいものではありませんでした。キリ(桐)の木はとても割りやすく、ケヤキ(欅)などと比べると、割ったり、切ったりの細工がし易い木で、薪づくりの材料としては楽のできる木でした。初夏の薄紫色の桐の花の強い匂いが鼻の奥に今でもしっかり残っています。湾岸地域ではそのキリの木をまだ見たことがありません。桐の下駄や箪笥をつくらなくなったからかも知れませんが、その真の理由はわかりません。桐の花を見てみると、5~6㎝ほどの筒状釣鐘形で、花冠の外側に柔らかい毛が密生しています。下部から花弁は繋がっていますが、先端部では5裂に分かれていて、私には何とも懐かしい花です。
さて、キリ科のキリに対して、ノウゼンカズラ科のキリモドキ(桐擬、Jacaranda mimosifolia D.Don)はボリビアからアルゼンチン北西部原産で、熱海のように並木として植栽され、有名になっているところもあります。キリモドキは南アフリカやオーストラリアで野生化しています。
キリモドキ、あるいはジャカランダは高さ7.5~15mの落葉樹で、樹皮は淡緑色~淡灰色、平滑又は細い溝条。枝は細く、ややジグザグになります。葉はシダに似ています。多数の花をつけ、花の長さ2.5~5㎝、曲がった筒状、花冠は青色、青紫色(ラベンダー・ブルー色)。花の色はキリよりも濃く、淡い青藤色で美しく、こちらも初夏の爽やかさを感じることができます。青紫の神秘的な花をつけた姿はホウオウボク(鳳凰木)、カエンボク(火炎木)と並んで「世界三大花木」の一つと称賛され、シウンボク(紫雲木)と呼ばれます。日本では5月の末くらいから咲き始め6月の上旬に見頃を迎えます。
*ジャカランダの花一つ一つを見ると、同じノウゼンカズラ科のノウゼンカズラの花によく似ています。キリの画像はありませんが、やはりジャカランダ、ノウゼンカズラの花に似ています。
*キリは中国原産で、薄紫色の筒状釣鐘形の花をたくさんつけます。今私が住んでいる湾岸地域にキリの木はありませんが、探すと、アオギリがありました。アオギリは亜熱帯を原産とするアオイ科の落葉樹。奈良時代に日本へ渡来し、暖地で野生化しました。私が湾岸地域で見ることができるのはこのアオギリで、葉がキリに似て、若い木の樹皮が緑色(昔風には青色)になるためアオギリと呼ばれますが、キリの仲間ではありません。
ところで、イペーもノウゼンカズラ科の広葉樹です。イペーは南米先住民の言葉では「皮の厚い木」を意味します。イペーはブラジルの国花で、サクラと同じように花が咲き終ってから、葉が出てくるという特徴があります。沖縄に導入されたのはイペーの仲間のコガネノウゼン(黄金凌霄)で、花は黄色(画像)。その後、コガネノウゼンが多く植えられるようになり、コガネノウゼンがイペーと呼ばれるようになりました。花の形はラッパ状で、それが別名のゴールデントランペットツリーの由来です。
こうして、私の子供時代の記憶の中のキリとその花は、大人になって知ったジャカランダやイペーにつながっていることを知り、記憶と知識がノウゼンカズラの花の形を通じてつながっていることが私の中で納得できたのです。少々大袈裟に言えば、時空を通しての私の知識の獲得物語の一つなのです。



(ノウゼンカズラ)

(イペー)