ハマゴウの花

 ハマゴウの見事な江戸紫の霞んだ色と、同じように霞んだ緑の調和は私の好きな色合いで、今の季節にしっくり合う。とはいえ、草のように見える木は天に向かう気配がなく、地を這うようで何ともだらしない。色合いは良くても、形態はいただけないというのが私の感想なのだが、砂浜がほぼなくなった湾岸地域でも海の近くにその姿を見ることができる。葉を風呂に入れるといい香りがする。日本だけでなく、アジア東南部から南太平洋、オーストラリアにも分布。葉の裏面には灰白色の毛が密生していて、白く見える。画像のような美しい青紫の唇形の花が咲き出している。

 「ハマゴウ」という名前は、平安時代の『延喜式』、『本草和名』において「浜を這う」という意味で、蔓荊子(はまはふ)、波万波比(はまはひ)と呼ばれていた。その後、ハマゴウが精油分を含み、芳香があることがわかり、香や線香が作られ、浜辺の香りの植物ということから、ハマゴウ(浜香)となった。その開花時期は7~9月で、画像のように唇型をした青紫色の花が数輪ずつ集まって咲く。種子は蔓荊子(まんけいし)と呼ばれ、煎じて飲むと、強壮、鎮痛に効果がある。ハマゴウは海岸に生育する常緑の海浜植物。海浜植物の北の代表がハマナスなら、南を代表するのがハマゴウ。

*最後の画像のハマゴウの葉にはフシダニによってハマゴウハフクレフシという虫えい(虫癭)ができている。虫えいは虫こぶ(虫瘤、英: gall)のことで、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のこと。いつも思い出すのは直江津中学校科学部のハマゴウの中えい(虫こぶ)についての研究。その観察研究の特徴は長年にわたる持続的な観察で、2019年科学部は自然科学観察コンクールで文部科学大臣賞を受賞。研究テーマはハマゴウフシダニの生活史。類似の研究で同校は過去に幾つも賞をもらっている。直江津海岸でハマゴウの葉に虫えい(虫こぶ)をみつけ、こぶの中に「ハマゴウフシダニ」の生息を確認し、調べ出した。そして、科学部はこの体長0.1ミリほどのフシダニの生活史について研究を受け継いできた。その結果、フシダニのメスを中心に脱水状態となって虫えいの中で越冬していること、春が近づくと虫えいの中で産卵することなどがわかった。