私に刷り込まれたヌルデの記憶

 ヌルデハイボケフシのついたヌルデの葉を見ると、ほぼ条件反射的に身を引いて、緊張する癖が今でも残っていて、私の身体的反応は今でも変わっていません。正に三つ子の魂百までという訳です。子供の頃、あちこちにヌルデが自生していて、祖父母からはかぶれるから触らないように注意されていました。子供の私はウルシそのものだと思い込んで、触らないようにしていたのですが、それがウルシではなく、ヌルデだと知るのは大人になって暫くしてからでした。ヌルデをウルシと思い込み、ヌルデハイボケフシのついた葉は、葉が自らの持つ毒によって爛れていると思い込んでいたのです。何とも的外れな思い込みなのですが、そう信じ込んで、疑うことはありませんでした。

 ウルシ科のヌルデは山地の暖かいところに自生しています。ウルシやハゼほどはかぶれません。花は泡を吹いたような形で、秋に咲きます。葉はいくつにも分岐し、葉軸に、葉と同じ緑色の翼が発達しています。「ヌリデ」、「ヌデ」とも呼ばれます。

*ヌルデハイボケフシはヌルデフシダニによって葉に作られるフシダニの「えい」です。葉の表面にイボのようにふくらみ、葉裏はへこんで白い毛が密生し、その中にダニがいます。 ヌルデの虫えい(虫こぶ)としては葉の軸に形成される大きな虫えいが有名で、これはヌルデミミフシと呼ばれますが、昔からの呼称である五倍子(ごばいし)の名の方が広く知られています。一方、画像のように葉にイボ状の虫えいを多数つけるのがヌルデハイボケフシで、五倍子よりも多く、すぐ見つかります。五倍子の住人がアブラムシ(ヌルデシロアブラムシ)であるのに対して、葉の虫えいの住人はフシダニ(ヌルデフシダニ)です。