メタバースの「メタ」とは?

 最近よく聞く「メタバース(Metaverse)」は英語の「超、メタ(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語。メタバースはコンピューターやコンピュータネットワークの中につくられた3次元の仮想空間のこと。「ウェビナー(Webinar)」が「Web」と「Seminar」からの造語で、その意味はウェブセミナーやオンラインセミナーのことであり、訳せば「通信講習」とでもなるのだが、それと同じで、Metaverseを「超宇宙」と訳すと何とも野暮で、やはり戦後の訳語習慣から「メタバース」と呼びたくなる。

 ところで、「meta」は「…の後に」というギリシャ語の接頭辞だが、私は反射的に「形而上学(Metaphysics)」という語が思い浮かぶ。カタカナに置き換えた「メタフィジックス、メタフィシカ」もほぼ同時に出てくる。そして、その次は「自然学を学んだ後に学ぶ学問、つまり哲学」というアリストテレスの説明であり、さらに彼の同名の著書も浮かんでくる。それは「文脈の外から学問を一般的に考察する」というアリストテレスの哲学の定義でもあり、自然学や物理学を研究した後で、より一般的見地から研究自体を含めて研究することを意味している。

 数学基礎論や数理論理学では、数学や論理学の理論を形式言語で表現されたシステムとみなし、それを数学的に研究してきた。研究対象である「数学」や「論理学」のような「言語システム」と、それらを研究するために使う「数学」を分けて考える必要があり、後者を「メタ数学」(Metamathematics、超数学)と呼んでいる。

 Metaphysics、Metamathematicsはそれぞれ物理学についての研究、数学についての研究であり、いずれも知恵を愛する哲学の一部門だというのが私の自然な理解なのだが、さて皆さんはどうだろうか?