イチジクの木は私の住む湾岸地域ではまず見ないので、見つけると妙に嬉しいのである。柿の木も桐の木も同じようにお目にかからないが、その共通の原因は定かではない。かつての田舎の植生と現在の湾岸地域の植生が違うとは思えないので、これはきっと人為的なものに違いなく、イチジクが柿の木や桐の木とよく似た社会的影響を受けた木だということは確かだろう。
イチジク(無花果、映日果)はクワ科イチジク属の落葉高木。原産地はアラビア南部。「無花果」の字は、花を咲かせずに実をつけるように見えることからつけられた。私たちが食べる実は厳密には果実ではなく、花なのである。イチジクは隠頭花序と呼ばれる花をつけ、果実のように見える部分は、実は花軸が肥大化したもの。また、イチジクの切り口から出る、あの白い液体はタンパク質分解酵素「フィシン」で、子供の頃白い液体を手や口につけて痒くなったり、ヒリヒリしたことを思い出す。