アコウの実と花

 アコウは日本の南部沿海部に見られるイチジクの仲間。小枝を傷つけるとイチジクと同じように乳液が出てきます。アコウの木を見ると、幹や枝には緑の実がたくさんついています(画像)。木の肌に直接果実が着いているため幹生花(幹生果)と呼ばれます。

 アコウの花は表には見えず、太い枝や幹に突然できる「花嚢」の中にひっそりと咲きます。雌雄異株で、イチジクコバチが花嚢の口部を出入りすることで交配します。アコウの実は最初は花で、後に果実へ変わっていきます(名前も花嚢から「果嚢」へと変わる)。この実はイチジクと同じく、花嚢の内側につき、外見上花が見えないまま、果実が熟します。

 赤い小さな果実を「赤子」に見立ててアコウと呼ばれ、漢字表記は「赤榕」、「雀榕」です。「赤榕」は赤い実がなる榕(ガジュマル)、「雀榕」はスズメのように花や実が連なるガジュマルという意味です。アコウは常緑樹ですが、1年に1回以上、一斉に葉を入れ替え、葉が全くない時には落葉樹のように見えます。

 アコウの種子は鳥によってアカギやヤシなどの樹木の上に運ばれ、成長すると気根で親樹を覆い尽くし、枯らしてしまうこともあるため、「絞め殺しの木」とも呼ばれます。アコウの木は葉がたくさん茂り、地面に張り出した根が特徴的で、幹や枝から伸びる大きな気根があります。

 こうして、私にはアコウは不思議の木の代表で、アコウの考えもつかないような大胆不敵な生存戦略に感心するしかないのです。