三題噺

 三題噺とは、落語の形態の一つで、落語家が客から人物、品物、場所の三つの題を自由に出してもらい、それらを即席で合わせて一つの話とするもの。文化1(1804)年,江戸下谷の孔雀茶屋で三笑亭可楽が「弁慶、辻君、狐」の三題をまとめたのが始りという。三題噺としてつくられた代表的なものに『鰍沢(かじかざわ)』、『大仏餅』、そして『芝浜』がある。
 縦割りの行政組織は国の政策づくり、市町村のビジョンづくりにも大きな影を投じている。そのためか、最近は複数の組織から知恵や人を出しての議論、立案が増えてきている。三でも五でも構わないが、複数の問題をつなぎ合わせながら、一つの政策に結実するプランづくりも必要になってきている。縦割りの行政を越える作法の一つが落語の三題噺に見て取ることができる。三題噺を手本にしてこれまで私が議論してきた事柄を求めてみよう。
 三つの題としてこれまでここで私が話題にしてきた事柄を列挙すると、それらをさらに組み合わせることが浮かび上がってくる。
温暖化、ごみ、環境保全生物多様性
循環経済、自給自足、地産地消
人口減少、高齢化、少子化
これらの馴染の現象や概念と並んで、少々大袈裟に世界を眺め、分類すると、
物理世界、生命世界、精神世界
世界1(物質世界)、世界2(意識世界)、世界3(知識世界)
といった区分がこれまで歴史的に考えられてきたがわかる。
 人の関心は喫緊の課題や問題に焦点を合わせるのは得意であっても、その背景や本質となると適確に把握するのは簡単ではなくなる。そのためか、行政の組織は目先の問題解決に適したものになっていて、予算の決定に問題があるとはいえ、実行に結びつくものになっている。だが、一つの組織だけで中・長期的なプランを立て、実行することは、逆に得意ではない。そのため、委員会などをつくって、立案を委任することになる。そして、それがこれまでの習慣となってきた。
 そのような状況の中で、三題噺のスタイルを使ったプラン作りはどうだろうか。委員会をつくって、アンケートをもとに次の図書館づくりとその運営をどうするかを答申してもらうより、SNS、電子図書、パソコンを題にして、新しい図書館落語をつくってみてはどうだろうか。市民が落語創作作家になって、市が直面する問題を市役所から提出してもらい、三題噺として落語創作を競い合ってみる。文字通りの駄洒落だけの話になっても構わない。不真面目で、プランとしては使えないものは自然に淘汰されるものである。
温暖化 ごみ 環境保全生物多様性
循環経済 自給自足 地産地消
人口減少 高齢化 少子化
縦に三つ、横に三つ、あるいは斜めに三つ、もっと自由に票の中のどれか三つ、どれか五つ、どんな組み合わせ、数でも構わない。これらだけでも多様な組み合わせが可能で、三題噺は様々に創作できる。災害、ボランティア、助け合い等々、まだまだたくさんの候補が控えている。
 ビジョンやプランをつくるのは本来楽しい筈で、それが統計データや過去の実績に潰されて息が詰まっていては苦しいだけである。理想に燃える必要はさらさらなくても、三題噺をつくって洒落るくらいなら誰でも気楽に参加できる筈である。