2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ノゲシとノボロギクと、綿毛

ノゲシ(野芥子)は日当たりの良い場所でよく見られます。ノゲシは日本には縄文・弥生時代に「史前帰化植物」として入ってきました。普通は2月から夏にかけて黄色の花を咲かせるタンポポ似の雑草です。 名前から「野のケシ」を連想しがちですが、ノゲシはケ…

冬を感じ、春を感じ、それぞれにいのちを感じる

冬を感じさせてくれる風景となれば、枯野とそこのものたち。枯野なればこそ、いのちの存在がとても目立つのである。枯野の中で、いのちは際立たざるを得ないのだ。 枯野に勾配があり、そこに雪が積もれば、ゲレンデに変わり、枯野どころではなく、白銀輝く雪…

河鍋暁斎と日本画

河鍋暁斎記念美術館は埼玉県蕨市にあり、幕末から明治時代前半の江戸、東京で活躍した狩野派絵師河鍋暁斎(かわなべきょうさい、1831-1889)の美術館です。 *「暁斎」は「ぎょうさい」とは読まず、「きょうさい」と読む。それ以前の「狂斎」の号の「狂」を「…

ルッコラの花

ビタミンCを含むルッコラは古くから食されてきました。ピリッとした辛みとゴマに似た香りが日本人の好みに合うハーブ。生ハムやキノコと合わせたサラダなど、イタリア料理と相性がよく、画像の花も食べることができます。ルッコラの葉も花も胡麻のような風味…

カワズザクラの開花

4日前に「カワズザクラの開花間近」と記したが、昨日開花した。何だか急に眼の前が春になった気分である。カワズザクラはオオシマザクラとカンヒザクラの交雑種だが、シュゼンジカンザクラ(修善寺寒桜)もオオシマザクラとカンヒザクラの交雑種とのこと。ま…

偶像礼賛

人が作った具体的な像で、特に神や仏などをかたどったものは偶像と呼ばれ、崇拝の対象となってきた。神や仏の存在は証明するものではなく、直接に知る、感得するものだとよく言われる。だが、それができる人は僅か、あるいは仮にできたとしてもそれをきちん…

ホトケノザの花

ホトケノザの開花期は春ですが、空き地など日当たりのよい場所では通年で花を咲かせます。ホトケノザはシソ科の一年草で、薄紫色の花をつけます(画像)。基本的には秋に芽を出し、越冬して春に花を咲かせます。ホトケノザの名前の由来は、葉が茎を包み込む…

冬のミニアイリスの花

ミニアイリスの一つがイリス・レティクラータ(Iris reticulata)で、とても小さなアイリスの仲間です。コーカサス山脈周辺のトルコやイラン、イラクそれにロジアに分布しています。日本ではレティクラータが有名ですが、その他にも様々な種類の改良・交雑品…

運河のサギたち

「サギだ」と嬉々として見ると、すぐに「本当にサギなのか」、「どうしてあれがサギだとわかったのか」といった疑念が過ぎる。私の過去の記憶から「あれはサギだ」とわかったのではないかと思う。それが本当に正しいかどうか確信などないのだが、これまでの…

プリムラ・ジュリアンの花たち

プリムラはヨーロッパやアジアに自生するサクラソウ属 (Primula) の原種やその変種、そして、それらを交配して作られたグループです。プリムラ・ジュリアンは日本で生まれた、プリムラ・ポリアンサとプリムラ・ジュリエとの交配種で、西洋サクラソウの一種で…

パンジーの花たち

スミレ科のパンジー(Viola × wittrockiana 、Pansy)はヨーロッパの野生のスミレから改良されたもので、「ガーデンパンジー(Garden pansy)」とも呼ばれます。日本では花径が5センチ以上のものがパンジー、それより小さなものは「ビオラ(Viola)」と呼ば…

幕末からの日本画の変容を通じて

九州国立博物館所蔵の「ヒポクラテス像」は 谷文晁門下の渡辺崋山筆(1840)。この絵は医学の祖と称えられるヒポクラテスの肖像で、陰影の付いた頭部を巧みに描き、眼が光を反射する様子を白い絵具を点じて表わしている。崋山(1793-1841)は画家で蘭学者。…

日本の水仙の来た道

地中海沿岸から長い年月をかけて様々な文物とともにシルクロードを経由して伝わってきたのが水仙。シルクロードを通じて、東洋に運ばれてきた西洋の文物の一つが水仙。葡萄や柘榴、胡桃や胡瓜が伝わってきただけでなく、宗教、文化、芸術もシルクロードを経…

シロバナスイセンの花たち

ヒガンバナ科のシロバナスイセン(白花水仙)の別名はペーパーホワイトで、英語名がpaperwhite narcissus、中国名が白水仙 。西ヨーロッパ(フランス、スペイン、ポルトガル)、地中海沿岸、北アフリカ原産で、多くの初期文献ではフサザキスイセンと同種とされ…

「雪月花」-日本画の習合と選択

仏葬の副葬品である冥銭は六道銭とも呼ばれ、三途の川の渡し賃とも言われています。しなの鉄道の「ろくもん」は「真田一族」の家紋「六文銭」から名前がつけられました。列車の配色は真田信繁(幸村)が大坂冬の陣などで用いた「赤備え」(赤で統一された甲…

ナンテンの葉の色合い

ナンテンはメギ科ナンテン属の常緑低木。赤い果実や紅葉を観賞する和風庭園の定番です。そのためか、誰もナンテンの花を気にしませんが、その開花は初夏で、枝先に伸びた円錐状の花序に、白い小花が集まって咲きます。ナンテンの和名は漢名の「南天燭」の略…

エリカの花たち:二種

ツツジ科のエリカは繊細な枝に小さな花がびっしりと咲き、にぎやかな印象ですが、一つ一つの花も個性豊かで、可憐です。エリカ属には740種もあり、そのうち16種がヨーロッパに、ほかの大部分は南アフリカに自生しています。 最初の二枚の画像は南アフリカ原…

クリスマスローズの花:名前の整理

3日前に「2月のクリスマスローズの花」として2回に分けて記しました。でも、「クリスマスローズ」という名前は紛らわしく、スッキリしない気持ちで、気になったままでした。そこで、とりあえずの整理をしてみました。 園芸を含めた日常の総称はヘレボルス…

冬のレースラベンダー の花

シソ科のレースラベンダー(Lavandula multifida)の別名はファーンリーフラベンダー、ムルチフィダラベンダーで、地中海西部沿岸のイタリアやスペインに分布しています。海岸の砂礫地に生え、葉は灰緑色で、「シダ」のような羽状の深い切れ込みがあります。…

カワズザクラ(河津桜)の開花間近

我が家の近くの公園には10本を優に越える河津桜があります。2月に入り、蕾が大きくなり始めました。いつも2月中旬には花をつけ始めますから、今年も開花が近づいています。気候変動と紛争で世は騒然としていても、サクラは律儀に開花を準備しています。 カ…

節分に(4)

荻野慎諧の『古生物学者、妖怪を掘るー鵺の正体、鬼の真実』(2018年)は、地質・古生物学者である著者が古文献を渉猟しながら、妖怪の正体の「科学的」解明を目指した快著。鬼や悪魔といった想像上の生物はともかく、角を持つ実在の動物には、シカやウシ、…

節分に(3)

鬼は(1)祖霊や地霊、(2)天狗、(3)邪鬼、夜叉、羅刹などに分けられるが、ここにも神仏習合が浸透していて、様々な要素が混淆しているのが日本の鬼。元々は死霊を意味する中国の鬼が6世紀後半に日本に入り、日本に固有の古来の「オニ」と重なり、「鬼」…

節分に(2)

私の中の鬼の正体は何だろうか。大人になった私には仏教と鬼とが知識レベルで結びついている。だが、私が子供の頃の鬼はもっぱら怖い存在だった。では、鬼は悪者だったかと問われると、どうもはっきりしない。そのためか、今でも持国天、増長天、広目天、毘…

節分に(1)

「節分」は文字通り「季節の分かれ目」のことで、立春、立夏、立秋、立冬の前日が節分で、年に4回ある。春の節分だけが現在まで残っているが、その理由はこの日が一年の初めと考えられていたため。私たちにとって年の初めは新暦の1月1日だが、昔の人々にとっ…

シャリンバイの実の色変化

湾岸地域にはうんざりするほど多いのがシャリンバイです。梅に似た白い花を咲かせ、小枝が車輪のように出ていることから、「車輪梅」という名前になりました。シャリンバイは5月~6月に梅のような白い花を咲かせます。 シャリンバイは秋になるとブルーベリー…

ハイカラな森蘭斎と、国粋的な岡倉天心

純粋な日本画、彫刻などは実は存在せず、日本文化そのものが混合的、混血的であると述べてきましたが、それが端的に表れているのが神仏習合の日本宗教です。仏教と神道の習合は、真に日本的な特徴が混淆性、混血性、混合性にあることを見事に示しています。…

ロウバイの花

ロウバイ科のロウバイ(蝋梅)は中国原産の落葉樹。早い種では12月頃に、遅くても2月に黄色い花がやや下を向いて咲きます(画像)。寒い時期に開花し、香りが強く、花柄が短く花が枝にまとまってつくといった点でウメに似ていますが、ウメはバラ科です。 蝋…

2月のエンドウの花

マメ科のエンドウの学名はPisum sativum (Lathyrus oleraceus)で、「エンドウ」は和名です。エンドウは世界中で栽培され、私たちの重要な食用になっています。英語ではグリーンピース。エンドウマメとも呼ばれ、別名はノラマメ、サヤエンドウ、ヨサクマメ(…

フェノロサとコンドル:二人のお雇い外国人

若きフェノロサがもっと若い岡倉天心を従えて精力的に日本美術の再発掘をし、多くの日本画を買い漁ったのに似て、フェノロサと同年輩のコンドルは狩野派の絵師にして浮世絵や戯画までこなす天才河鍋暁斎の弟子になり、日本文化の虜になりました。二人ともお…

「日本画」の混合性、混血性

明治期に洋画が発展するなかで生まれたのが「日本画」という言葉、概念です。多くは岩絵具や和紙、絵絹などの伝統的材料や技法が用いられている絵画を指し、彩色画と水墨画に分けられます。狭義では、明治維新から第二次世界大戦終結までの77年間において、…