日本の水仙の来た道

 地中海沿岸から長い年月をかけて様々な文物とともにシルクロードを経由して伝わってきたのが水仙シルクロードを通じて、東洋に運ばれてきた西洋の文物の一つが水仙。葡萄や柘榴、胡桃や胡瓜が伝わってきただけでなく、宗教、文化、芸術もシルクロードを経て、世界各国に伝わっていった。

 水仙は日本人にとって馴染み深い花だが、日本固有の植物ではなく、はるか遠い昔に中国から渡ってきたもの。中国では水仙が寒さに耐えて咲き、清楚な花と香りを持つことから、人々に愛されてきた。日本にもたらされた経緯ははっきりしないが、海岸での自生が多いことなどから、球根が海流で運ばれたのではないかと言われている。

 水仙の原種は変種、亜種含めて約60種以上ある。原産地は主にスペイン、ポルトガル、アフリカ北部などの地中海沿岸諸国。その水仙が日本の冬の風景に欠かせないものになり、冬枯れの庭に凛として咲き、正月の床の間に活けられ、日本人の生活に溶け込み、日本固有の植物になりきっている。水仙は日本固有と言われる文化や思想と実によく似ている。

 水仙は中国名をそのままとったと言われているが、室町時代の漢和辞書『下学集』(1444年)に、漢名「水仙華」、和名「雪中花」と記されている。だが、「雪中花」は定着しなかったようで、雪国育ちの私には少々残念な気持ちなのである。