万緑叢中紅一点

 「万緑叢中紅一点、動人春色不須多(万绿丛中红一点、动人春色不须多)」は北宋の詩人、王安石の詩の一節です。「一面の緑の中に鮮やかな赤の柘榴の花が一輪咲いている。人を感動させる春の景色に多くは要らない」という意味です。「紅一点」は王安石の「詠石榴詩」に由来すると言われてきました。でも、この説には懐疑的な意見が多く、「詠石榴詩」は引用した二句が伝わるだけで、前後の部分は不明です。

 新緑と花の赤との対比の風景は中国文学の典型表現であり、緑と赤の対比は今の中国に生き残っています。詩に描かれた「紅一点」は、多くの同じようなものの中で一つだけ異彩を放つものを指し、中国の『書言故事 花木篇』にそのような記述があるのですが、これは王安石の作ではないという説もあり、原詩も確認されていません。

 さて、「万緑」を季語にしたのが中村草田男。中高生ならほぼ誰もが知っている「万緑の中や吾子の歯生え初むる」の「万緑」は「万緑叢中紅一点」から得たものです。

*画像のどれが「万緑叢中紅一点」を表現しているでしょうか?

**最後の画像の紅一点は柘榴の花です。