ピラカンサの花

 ピラカンサ(トキワサンザシ)属にはトキワサンザシ、タチバナモドキ、カザンデマリが含まれていて、今は総称してピラカンサ(ス)と呼ばれています。ですから、ピラカンサと聞いて、北原白秋の「この道」を思い出す人は少ないと思います。

 

この道はいつか来た道

ああ そうだよ

お母さまと馬車で行ったよ

あの雲もいつか見た雲

ああ そうだよ

山査子の枝も垂れてる

 

 詩の中の山査子(サンザシ)は中国原産で、シベリア、朝鮮半島にも分布しています。日本には江戸時代中期に渡来。3000年近い栽培の歴史があり、古くから民間薬、食用として重宝されてきました。

 キリストが処刑された時のイバラの冠は西洋サンザシの小枝と言われています。西洋サンザシは英名で「メイフラワー(May flower)」。英語のMayは5月ですが、その名の通り5月頃に白や桃紅色の花をつけます。イギリスの清教徒が信仰の自由を求めてアメリカに渡った時の船名は「メイフラワー号」で、その船尾にサンザシの花が描かれていました。

 ピラカンサは8〜10月に真っ赤な実をつけ、鳥に人気があるのですが、今咲いている花の臭いは腐った魚肉の臭いに似ていて、秋の赤い実と春の白い花の間に大きな落差を感じるのは私だけではない筈です。