ピラカンサ:タチバナモドキの柿色の実

 ピラカンサの主な品種にはトキワサンザシ、タチバナモドキ、ヒマラヤピラカンサ、カザンデマリなどがあり、園芸ではどれも「ピラカンサ」と呼ばれています。学名はPyracanthaで、ラテン語ピラカンサ属なのですが、日本ではトキワサンザシ属と呼ばれ、バラ科の属の一つになっています。

 福羽逸人(ふくばはやと)はタチバナモドキを日本へ導入した、明治の農学・造園・園芸学者です。フランス・ドイツに留学し、新宿御苑の造園を担当したほか、東京の道路の並木として、 沢山のプラタナスユリノキを育てました。さらに、彼は野菜や果物の促成栽培の開発や普及、そして品種改良に力を注ぎました。

 和名の「タチバナモドキ」は福羽ではなく、その実の色や形がミカンの仲間のタチバナに似ていることから牧野富太郎命名しました。タチバナモドキは中国原産で、日本には観賞用として明治時代に導入されました。鳥によって種が運ばれ、各地で野生化しています。

 実の先端には萼片と呼ばれるものが残り、タチバナに似ているだけでなく、小さな柿のようにも見えます(画像)。果実の中にはゴマのような種子が一粒入っています。

 湾岸地域にもピラカンサが少なくありませんが、種名まで特定しようとなると、私のような素人にはなかなか大変です。交雑した個体も多いので、「ピラカンサ」と呼んで分類の細部まで突き詰めないのも一つのやり方なのでしょうが、凡人は気になって仕方ないのです。そこで、「葉は細長い線状長楕円形で、全縁、葉裏は灰白色の綿毛が密生し、花序には毛が密生し、果実は橙黄色」であることから、カザンデマリやトキワサンザシなどではないと判定しました。

タチバナモドキ以外のピラカンサや類似の植物についても順次調べてみるつもりです。