ノゲシとノボロギクと、綿毛

 ノゲシ(野芥子)は日当たりの良い場所でよく見られます。ノゲシは日本には縄文・弥生時代に「史前帰化植物」として入ってきました。普通は2月から夏にかけて黄色の花を咲かせるタンポポ似の雑草です。

 名前から「野のケシ」を連想しがちですが、ノゲシはケシ科ではなくキク科の植物。レタスもキク科。レタスを収穫しないでおくと、茎が伸び、ノゲシのような花が多数咲きます。ですから、ケシとは違って、ノゲシは食べることができます。タンポポ(蒲公英)もキク科。ノゲシは草丈が高く、枝分かれした茎に花をいくつもつけます。タンポポは背丈が短く、伸びた茎の先に花を一つつけるだけです。

 キク科のノボロギク(野襤褸菊)の和名は「野に生えるボロギク」で、ボロギクとはサワギクのことです。ノボロギクは世界中に広く分布します。日本では明治初期にヨーロッパから入り、一般の畑や果樹園によく見られ、道端や空き地にも自生します。黄色い花と、花穂の下の方に黒いギザギザのような小さい受け皿部分があるのが特徴。

 ところで、動物のように自分で動くことのできない植物にとっては、種子が生息範囲を広げる手段。根に縛られない自由な形で、転がったり、水に浮いたり、鳥に食べられたりして移動します。ノゲシタンポポ、ノボロギクはその手段として、風に飛ばされる方法を選んだのです。花の時期が終わったタンポポは一度花を閉じ、茎が地面際に倒れこむようになり、その間に種子を作り、綿毛を作ります。綿毛ができ、種子を飛ばす準備ができたタンポポは再び、茎を立ち上がらせ、ます。遠くまで飛ばすために茎を伸ばし、綿毛を開きます。

 キク科の植物には綿毛を付けるものが多く、例えば、野菊の中のボロギク。パイオニア植物のダンドボロギク(段戸襤褸菊)の英名はfire weed。その意味は「山火事の後、他の植物よりも早く生える雑草」。ノボロギク(野襤褸菊)も同じ帰化植物で、共に花の後に真っ白な綿毛をつけます(画像)。ノゲシもノボロギクも花びらのない黄色い花と、白い綿毛のあるのが特徴。昨年亡くなられた絵本作家甲斐信枝は雑草の美しさを描き続け、ノゲシがタネを飛び散らす様子を「綿毛の舞い舞い」と呼んでいます。ノゲシもノボロギクもそれぞれの花はそれぞれの形で自己主張をしていますが、綿毛はそっくりで、共通の繁殖戦略をとっていることがよくわかります。

ノゲシ

ノゲシ

ノボロギク

ノボロギク