ナミテントウ再考

 1日前に「5月のナミテントウの成長」で、ナミテントウの幼虫から蛹、そして成虫に変わることが近くのアキグミで進行中だと述べました。最後に「アブラムシを食べる、飛ばないナミテントウが交配によってつくられ、利用されているが、私などはナミテントウに申し訳ない気持ちになる」と書いたのですが、今回の画像のように蛹が成虫になるのが間近になると、無事に飛んでほしい気持ちが自然に起こり、少々複雑な心持になるのです(画像は異なる模様をもつナミテントウの交尾と蛹のもので、最後の画像の蛹の方が成虫により近い)。

 さて、飛ばないナミテントウをつくり出した理由は明らかで、施設栽培(ビニールハウスや温室といった施設での栽培)などでアブラムシ対策をするとき、「飛ばないナミテントウ」がいるととても好都合なのです。ハウス内でアブラムシを長く、安定して食べ続けてもらうためで、これは子供でもすぐわかる理由です。普通のナミテントウは、アブラムシをよく食べる優秀な天敵ですが、ハウスに放しても、すぐに外へ飛び出てしまうことが課題でした。飛ばないナミテントウなら、アブラムシを効率よく殺せるし、農薬の使用回数を減らし、環境や作業者への負担も軽減できます。では、どうやって「飛ばない」ナミテントウの個体を作るか。遺伝子を直接いじるのではなく、自然界の飛ぶのが下手な個体を代々選び続け、飛ばない系統をつくり出したのです。この「選択と交配」を何十世代も繰り返すことによって、遺伝的に飛ばない系統が作り出されたのです。こうして、遺伝的に飛翔能力を欠くナミテントウが生まれました。「飛ばないナミテントウ」は、幼虫の段階で製剤化され、発育して成虫になった後もよく定着し、アブラムシの増殖を抑えるので、成虫を放すよりも防除効果が持続します。

 卵から孵化してから幼虫として約10日を過ごし、約6日の蛹期間を経て成虫、つまり成虫のナミテントウとなります。成虫としては30~50日程度生きることができるとされていますが、この飛ばないナミテントウ、すでにナスやイチゴなどの施設栽培では実用化され、アブラムシの数を抑える効果が確認されています。

 「飛べないナミテントウ」から「飛ばないナミテントウ」へ変わることは私たちの知識の一面を見事に示してくれています。少々大袈裟に叫べば、科学技術とは科学知識を人間中心主義に基づいて自然に適用、活用したものだということ。道具は武器にも利器にもなり、殺すことは生かすことにつながります。この適者生存の姿に生きることが持つ運命を感じ取ってしまうのは決して私だけではない筈です。