毎年夏にキマダラカメムシを見てきたが、今年はその姿がとても目立つ。カメムシが大発生したことの証拠の一つと考えれば、確かに納得はいく。キマダラカメムシの若い幼虫は淡褐色に黒と朱の横縞模様が背面全体に並び、成虫になるのが近い幼虫は粉を吹いたような暗い灰色に、規則的なオレンジ色の星が並ぶ(画像)。成虫は国内に生息するカメムシ亜科の中で最大のサイズをもち、色は黒褐色で、黄色の小斑紋が見られ、頭部から小楯板にかけて黄色の縦条がある(画像)。
キマダラカメムシは広葉樹の樹液を吸っている。夏から秋にかけ、成長して大きくなった幼虫や成虫が幹に張り付くように樹液を吸っている姿が見られる。キマダラカメムシの幼虫から成虫への変化は昆虫老人の心を躍らせてくれる。その変態に対し、人の成長はネオテニー(幼形成熟)としか思えないと勝手に思いながら、成虫の見事な変貌に感心し、脱帽するしかない。昆虫は幼虫から成虫になるまで何度も脱皮するのだが、その回数は種によって異なる。若齢幼虫は一齢なのか、二齢なのかわからないような場合に使うことが多い。老齢幼虫、あるいは老熟幼虫はすぐ蛹か成虫になりそうな、成熟した幼虫を指す。また、終齢幼虫は次の脱皮で蛹になるか、成虫になるかという状態のものを指す(キマダラカメムシの幼虫は五齢まである)。「老熟した幼虫」とは形容矛盾のような表現だが、これも昆虫の変態の実像を描くための工夫なのである。
キマダラカメムシは1770年に長崎県の出島で発見され、次第にその勢力を拡大し、1995年に広島、そして、2008年に東京で見つかった。キマダラカメムシの分布の変化から着実に温暖化が進んでいることがわかる。
*画像は成虫と老齢幼虫