風景を生み出すもの

 空の雲の位置や量の違いに応じて私たちの見る風景は随分と異なる。雲と煙、朝日と夕日といった質的な違いだけでなく、雲の有無、雲の量的な違いも、さらに言えば、天候の変化が風景の違いを引き起こしている。そして、それが風景と景観の違いなどと言われているが‥‥

 火力発電所がこんな煙を出す筈もなく、雲と見分けがつきにくいだけで、自然も時には粋な悪戯をするものだというのが多くの人の反応。雲の如き煙は地球温暖化に直結し、火力発電所は悪の根源、温暖化の張本人のように見えても、実際は雲を煙と錯覚したからに過ぎない。雪の富士が浴びているのが朝日なのか夕日なのかについても、朝と晩では大違いと思う人と、いずれも陽の光を浴びてピンク色に染まっていると思う人では風景は随分と違う。

 雲の量や質、煙突の煙と雲、富士のピンクの雪肌、それらの間に見られる違いは、景観(そして、地形や地勢)とは異なる風景が知覚、事実、知識の微妙な配合から生まれていることを暗示している。