クズの花(2)

 クズは蔓性の半低木で、山野で普通に見られる。基部は木質、上部は草質となり、長さ10mにも達し、時には周りの木を蔓で覆ってしまう。根は長大で、多量の澱粉を蓄え、主根は長さ1.5m、径約20cmに達する。クズは子供の頃から身近にあった植物であり、夏には欠かせない雑草だった。

 紅紫色の花をつける「葛」は、秋の七草の一つで、万葉集古今和歌集にも登場し、古くから人々に親しまれてきた。また、根を乾燥した葛根(かっこん)は漢方で解熱薬として利用されてきた。クズの花は葉の脇から総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し、蝶形の花をたくさんつける。

 湾岸地域に蔓延っていたクズは近年次第に減ってきているとはいえ、まだあちこちで繁茂している。あまりに蔓延るためか、人目につき易く、駆除されやすいのがクズの欠点でもある。だが、その花は意外に目立たなく、今年クズの花を見たのはこれが3回目で、繁茂するクズの蔓の中で目立たないように咲いていた。

 クズの根から葛粉をつくるのは手間のかかる作業だが、私が葛切りを食べたのは随分前で、はっきり思い出せない。クズの葉や蔓、葛根、クズの花、葛粉、そして葛切りと、クズは様々に姿を変えて、私たちの生活に結びついてきた。