ケイトウの花

 ヒユ科ケイトウ(鶏頭、鶏冠)の花に見える部分は花ではなく、花序と呼ばれる部分です。ケイトウには花びらがなく、この花序が鶏のトサカのように見えたり、あるいは槍のように見えたりしています。トサカや槍に隠れて小さい花がついています。アジサイやカラーなどと並んで、ケイトウの花もその「隠れ花」タイプです。

 原産地はアジア、アフリカの熱帯地方で、日本には奈良時代に中国を経由して渡来しました。花の色は赤や黄色、橙、紫、ピンクなど、多様な色の園芸品種があります。花穂の形状がニワトリの鶏冠(とさか)に似ていることからこの名がつきました。

 ノゲイトウ(野鶏頭)の花色は淡いピンクから濃い赤紫色で、ロウソクの炎のような形をしています。一方、炎のような形の花を咲かせるのがトサカ系やクルメ系です。私が子供の頃の田舎ではあちこちにトサカ系のケイトウが目立ち、夏から秋にかけて赤い花が輝いていました。カマキリもケイトウと同じようにあちこちにいて、珍しい存在ではなく、カマキリがケイトウの花の上にいても珍しい風景ではありませんでした。ですから、子供の私が若冲の絵を観たら、特段珍しい組み合わせを描いたのではなく、ごく日常の自然を描いたと思った筈です。また、俳句ならすぐに思い出すのが、曾根毅の

  鶏頭の俄(にわ)かに声を漏らしけり

の一句です。この句はケイトウの生き物のような花姿を鶏の声のようだと表現しています。伊藤若冲曾我蕭白が描くケイトウにピッタリです。