徘徊と彷徨(3)

 トウダイグサ科のポインセチア(英名Poinsettia、学名Euphorbia pulcherrima)は常緑の低木で、和名はショウジョウボク(猩々木)。クリスマスフラワーとも呼ばれ、原産地はメキシコと中央アメリカ。メキシコでは「Noche buena(クリスマス・イブ、聖夜)」と呼ばれている。和名は「ショウジョウボク(猩々木)」。日本には明治時代に到来。コスモス、ダリアと並び、メキシコから日本に到来した。

*猩々(しょうじょう)は古くに中国から伝わった想像上の動物で、体は赤い毛に覆われ、猿に似た体つきと人間のような顔で人の言葉がわかるとされる。オラウータンとする説もあり、酒を好むこの不思議な動物が名古屋南部では祭りに福神として登場する。また、能の「猩々」では専用の面が使われ、猩々は海に住む酒好きの妖精とされている。顔が赤いのは酒のため。ポインセチアのキリストの血を思わせる赤い苞葉が日本では赤い顔と赤毛の猩々と捉えられたようである。

 古代のアステカ人は日の短い冬の熱帯高地に咲き誇るこの植物を「cuetlaxochitl (発音はkwet-la-sho-shee)」と名づけた。彼らはこの植物の苞から紫がかった色素を抽出して織物や化粧品に使ったり、ラテックスと呼ばれている乳白色の樹液を解熱剤として使ったりしていた。

 現在クリスマスの代名詞的存在がポインセチアだが、17世紀にメキシコで布教活動をしていたフランシスコ修道会の修道士がポインセチアを見てベツレヘムの星を想像し、「ノーチェ・ブエナ」と呼ぶようになり、これを契機にポインセチアがクリスマスフラワーになった。あるいは、同じ17世紀にメキシコに移り住んだ宣教師たちが、赤く色づくこの植物を見て、清純なキリストの血と思い、キリストの誕生祭の行列で使い、その後、ポインセチアはクリスマスの飾りとして使われるようになった。

 インディオは自分たちの神のために花と植物を栽培していた。アステカ文明の神々の中にXochipilli(ショチピリ)という神がいて、19世紀半ばに16世紀のXochipilliの像が発見され、その像にはたくさんのハーブ(herb)や薬草花の彫刻が施されていて、その中にはノーチェ・ブエナもあった。このことからノーチェ・ブエナが薬として使われていたことが分かっている。

 メキシコの歴史によると、最初のアメリカ公使で植物学者でもあったJoel Robert Poinsettが1828年にメキシコを旅行中、Taxcoを訪れ、ノーチェ・ブエナに魅了され、同年アメリカのフィラデルフィアへ送り、自分の名前をつけた。その結果、英語圏の国では「ポインセチア」と呼ばれるようになった。

 日本にポインセチアが渡来するのは明治中期と言われるが、ポインセチアの需要が本格的に高まってきたのは90年代前半、バブルが終わった後で、それまでは冬の花鉢といえばシクラメン一強だった。布施明の歌う「シクラメンのかほり」が1975年に発売され、シクラメンは冬の高級贈答品となった。その後、シクラメンに代わって、ポインセチアがクリスマスの花として日本に定着した。90年代には鷲澤幸治氏によるダリアの「黒蝶」(黒味のある花色のダリアで、既に記した)がブームを起こし、メキシコ原産のコスモス、ダリア、ポインセチアは今の日本人の心をしっかり掴んでいるようである。