寒木瓜の「寒」と「ぼけ」

 バラ科のボケ(木瓜)の花が咲いている。ボケの花は確か春先に咲く筈で、狂い咲きかと思ってしまうが、これが大間違いで、晩秋から咲くボケがあり、それが「寒木瓜」と呼ばれている。名前に「寒」のつく植物には「品種名として「寒」がつく植物」、「本来の開花時期でない寒い季節に花が咲いたときに「寒」をつけて呼ぶ植物」、「寒中に花が咲くことから、別名として名前に「寒」がつく植物」などがある。さて、寒木瓜はどれだろうか。

 似たものを探すと、まず思い浮かぶのは寒椿(カンツバキ)で、これはヤブツバキサザンカの交雑種。カンアヤメは菖蒲(アヤメ)の仲間だが、冬の寒い時期に咲く種。桜の中にも『寒』を品種名に持つものがある。カンヒザクラ(寒緋桜)は旧暦の正月の頃に咲き始めることから「元日桜」とも呼ばれ、このカンヒザクラオオシマザクラ(大島桜)の交雑種とされる桜がカンザクラ(寒桜)である。

 木瓜の花も春に咲くが、二季咲きの性質をもったものが冬の寒い時期に咲くことがあり、その頃に咲く木瓜が寒木瓜。カンボタン(寒牡丹)も品種としては春咲きのボタンと同じだが、二季咲きの性質を持った牡丹で、冬に花をつけると「寒牡丹」。これが上記の問いへの答えだろう。

 ボケは平安時代に中国から渡来した植物で、当時の書物『本草和名』や『和名類聚抄』に、木瓜の和名として「毛介(もけ)」が紹介されている。この「もけ」が転じて「ぼけ」になったらしい。ということから、寒さに呆けるので「カンボケ」でないことは確かだろう。