トチノキとコブシの実

 恥ずかしながら子供の頃の私はトチノキもコブシもほぼ知らなかった。「ほぼ」というのはよく見ていたはずなのだが、見ていたものが何かという認識がなく、そのため記憶にもないのである。トチノキの実から「栃の実」ができることを知っていても、それを見た記憶がなかった。これはコブシについてもほぼ同様で、歌謡曲の歌詞で「コブシ」を憶えたことが記憶にある。トチノキと違って、コブシの場合はもっぱら花だけに関心があった。

 トチノキもコブシも春に花が咲き、今はその実が実り始めている。栃の実が通常の木の実の体をなしているのに対し、コブシの実は自由な形態で、大抵はグロテスクな塊となっている。マロニエセイヨウトチノキ)の根に吐き気を憶えたのが主人公のロカンタンだが、瘤が重なるコブシの実を見たら、より自然に実存を感じることができたのではないかなどと妄想してしまう(画像のコブシの実は例外的に形が整っている)。

 そんな妄想とは別に、大木のトチノキは心地よい木陰を提供してくれ、コブシの緑濃い葉は眼を休ませてくれる。

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