クサノオウ再訪

 4月の初めに挙げたのが、とても大業な名前のクサノオウ(瘡の王、草の黄、草の王)。そのクサノオウがまだ咲いていた。ケシ科クサノオウ属の草本植物で、全草に約21種のアルカロイド成分を含み、その多くが人間にとって有毒。黄色い汁が皮膚に触れると炎症を起こし、誤食すると昏睡、呼吸麻痺、感覚末梢神経麻痺などを起こす。

 なかなか美しい姿をしているが、この美貌の陰には恐ろしい毒が潜んでいる。この毒を利用して、薬草として重宝されてきた。クサノオウという名前もそこに理由があった。日本中で様々な呼び方をされ、いずれも薬や薬効、毒に関わっていた。クサノオウは「草の黄」という説。これは茎や葉を切断すると中から黄色い汁が出るからだった。この黄色い汁こそ毒であり、薬である。次は「草の王」という説。これは薬草の王という意味。そして、「瘡(くさ)の王」という説。瘡とは皮膚病のことで、皮膚病を直すという意味。また、「瘡なおる」が「くさのうる」、そして「くさのおる」となり、更に末尾の「る」が略され、「お」が長音化して「くさのおう」になったのではないかとも言われている。

 どの意味にも通じるのが、薬草として昔から私たちの生活に密着していたこと。子供が迂闊に口に入れたりすると、大変危険な野草。鎮痛剤としてアヘンの代用に使われ、尾崎紅葉が胃癌になった時、弟子の泉鏡花がこのクサノオウの薬を入手するために大変苦労したという話が残っている。

 鮮やかな黄色の花にはヤマブキ、ヤマブキソウがあり、いずれもクサノオウによく似ている。だが、ヤマブキは5弁、ヤマブキソウクサノオウは4弁、葉の形でヤマブキソウクサノオウはまるで異なる。ヤマブキソウは有毒。

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