春のハナアブたちの断片

 ハナアブはアブと呼ばれていますが、人を刺すアブではなく、ハエの仲間です。昔はショクガバエ(食蚜蠅)と呼ばれていました。「蚜」はガと読み、アブラムシのことですから、「アブラムシを食べるハエ」という意味ですが、一部の幼虫がアブラムシを主食とするためそのように呼ばれました。ハナアブは英語では Hoverfly、Flower flyと呼ばれていて、人を刺すアブの方はHorse flyです。

 ハナアブ科ヒラタアブ亜科のホソヒラタアブは腹部が黄橙色と黒色の縞模様で、それぞれの節に(太帯と細帯の)各2本ずつの黒帯があるスマートなアブです。Hoverflyと呼ばれるように、ホバリングしながら花から花へと飛び回り、湾岸地域でもよく見られます。

 同じハナアブ科ヒラタアブ亜科のミナミヒメヒラタアブは体長9mmほどの小型のアブで、腹部は細く黄と黒の縞模様です。成虫は花粉や蜜を食べ、作物の受粉を手助けします。これも湾岸地域ではお馴染みのハナアブです。

*画像の個体がホソヒラタアブ、ミナミヒメヒラタアブ(メス)であるというのはあくまで私の判定です。

 アメリカテマリシモツケの花にハナアブが来ています。花とアブを観察できるのは嬉しいのですが、その後にそのアブを同定したくなるのは好奇心であり、同定が必要だという脅迫観念でもあり、いつも通りの、何とも厄介な心理状態になるのです。ケヒラタアブは複眼に毛が生えているのに対し、ナミホシヒラタアブは顔に黒色中条があり、それらで二つのハナアブは区別できるようだとわかったのですが、顔を正面から見ていませんでした。AIはケヒラタアブと判定したのですが、私にはナミホシヒラタアブに思えてなりません。

 アシブトハナアブもハナアブ科の仲間。胸部に縦筋があり、腹部の黄色い三角班が目立つアブで、脚は黒く、ももの部分が太いのが特徴です。湾岸地域にもよく見られ、色々な花に集まります。人里や都市で人と共生し、幼虫は汚水中で腐植物を食べ、環境浄化に貢献しています。花の蜜を求める成虫は人を刺したりせず、身近な愛すべき存在です。ノースポールにこのハナアブが来ていました。