夏のハンゲショウ

 ドクダミ科のハンゲショウ半夏生、半化粧)の和名の由来は、夏至から数えて11日目頃に花が開き、この時期が暦上の「半夏生」に当たるためとも、開花期に半分だけ葉が白くなり、その様が半分だけ化粧したようだからとも言われている。また、葉の半分が白くなることからカタシログサ(片白草)、三枚の葉が白くなるという意味でミツシログサ、白くなった葉が白粉をかけたように見えることから、オシロイカケ、臭気がドクダミに似ていて、白粉をかけたような葉であることからシロドクダメなどと、様々に呼ばれている。どの名前も私たちの想像力の具体例であり、もっと詩的、私的に空想を広めたくなる。

 花期に葉が白くなるのは、ハンゲショウが虫媒花で、虫を誘うために白くて目立つように適応したのではないかと科学的に推測されている。花は紐状で、茎先の葉と対生する位置に長さ10~15cmの総状花序を出し、小さな白い花を多数つける(画像)。花には花弁がなく、花序の下の方から順に咲く。花序と向かい合う葉は花の時期に下半分が白くなり、昆虫を誘引し、果実の時期には緑色に戻る。つまり、ハンゲショウは可変のカラーリーフという広義の花を進化させた植物ということになる。

ユウゲショウ(夕化粧)はアカバナ科多年草で、南アメリカ原産、幕末から明治の初めごろに観賞用としてアメリカから移入された。高さは30~50cm、茎には短い白色の毛が多い。5月下旬から9月頃にかけて葉腋に径 1~1.5cmで淡い紅色の4弁花を1輪ずつ咲かせ、花弁には紅色の脈が目立つ。和名の由来は朝から夕刻にかけて花を開くため(最後の画像)。

**化粧と仮面は人の顔がもつ独特の地位を象徴しているというのが通り相場だが、植物について考えると実に興味深い。花は植物の顔であり、その顔も時には化粧し、仮面をつける。化粧する植物は表情をもち、それによって昆虫たちを惹きつけ、仮面をつけて動物を脅す。化粧や仮面は花に限らず、葉や茎にまで及び、それらを花に見せたり、カラーリーフとして動物を惹きつけたりする。

***半夏生夏至から数えて11日目の7月2日から七夕(7月7日)までの5日間。諸説あるが、田植えは夏至のあと半夏生に入る前までに終わらせるのが良いとされてきた。「半夏生」は半夏(烏柄杓)という薬草が生える時期に由来する。それとは別に同じ頃に花が咲く半夏生という草もある。半夏生の葉が白くなる時期に明石の蛸がおいしくなる。

ユウゲショウ