クモは悪玉と思われていますが、魅力的な謎の生き物でもあります。「昆虫」と「虫」を見分けるポイントは、頭、胸、腹に分けられるかどうか、脚は3対かどうかの二つで、クモは両方を満たしません。クモの近縁はダニやサソリなどで、確かにクモは嫌われていますが、日本にいるクモで人間に悪影響を与えるものはほぼありません。画像はナガコガネグモのメスで、他のクモ同様に、オスはメスよりずっと小さく、目立ちません。日本でよく見る大型のクモはコガネグモ、ナガコガネグモ、ジョロウグモ。
画像には白いギザギザ模様のクモの網(隠れ帯)が見えます。そこだけが白く浮き上がり、遠くからでも妙に目立ちます。その隠れ帯の周りに普通のクモの網が張ってあります。ナガコガネグモとその幼体の網には白帯が見られます。「隠れ帯」にはクモの体を天敵の目から効果的に隠しているという隠蔽説、隠すのではなく、網を破られないように鳥にアピールしているという強調説、体を実際より大きく見せる威嚇説などがあります。また、白帯の付着は造網行動の最後になるため、白帯は網の調整をしているという調整説、網を補強している補強説などもあります。
このような諸説乱立の中、網自体は紫外線をほとんど反射しないこと、白帯があるほど網に昆虫がよくかかること(誘引説)が科学的に示されています。白帯だけでなく、クモの体も紫外線を反射することによって昆虫を誘引しているという結果は意外なものですが、兎に角、画像の白い帯は隠れるだけの帯ではなかったのです。


