ブドウとザクロの実

 ダイコン、ホウレンソウ、ニンジン、ナタネなどの野菜は地中海や中央アジアが原産地、リンゴ、ブドウ、スイカ、イチジク、ザクロ、ウリなどの果物もアフリカや地中海、中央アジアが原産地、いずれもシルクロードを通って日本へ伝播した。

 キリスト教美術でよく描かれるのがザクロとブドウ。リンゴのような丸いものは禁断の果実の暗示で人の罪、ザクロとブドウはキリストによる救いを象徴している。静物画でもよく取り上げられ、シメオン・シャルダン(1699~1779)の「ぶどうとざくろ」(1739、ルーブル美術館)もその一例。だが、絵画に描かれるのは圧倒的にブドウであり、ザクロよりブドウの方が私たちの生活に密着してきたことがわかる。

 ブドウ(葡萄)と並んで私の記憶に残るのがザクロ(柘榴)。旧約聖書や古代の医学書などにも登場しているザクロは、5000年以上前から栽培されていた。昔から健康や美容によいとされており、好んで食べられていた。原産地であるイランからシルクロードを通って中国やヨーロッパへ伝わり、日本へは平安時代に渡来したようである。ザクロの実は不規則に裂け、種が多いことから、アジアでは昔から子孫繁栄、豊穣のシンボルだった。

 子供の頃、近くの家にザクロの樹があり、その実を食べたことが今でもザクロの樹を見る度に条件反射のように脳裏をよぎる。食べ頃は10月。特別にうまいという訳ではないのだが、口の中で弾けるような食感がたまらない。そして、爽やかな甘味と酸味が残る。

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