感染症では開発途上国の日本

 今日もテレビで国会議員が日本がこれまで新型コロナウイルス感染症対策の柱にしてきたクラスター潰しから、韓国やドイツの「PCR検査の徹底と隔離」の政策へと転換すべきだと主張し、未だにクラスター対策班が中心になっているため、専門家会議にも新しい人々を入れて戦略転換すべきだと叫んでいた。

 最初の段階から有識者たちは日本が感染症に関しては開発途上国であるとわかっていた。確かに、一部の有識者は日本がインフルエンザ対策で成功した経験が通用すると思っていた。そのような中で武漢で起こった流行から手に入る情報を集め、その情報をもとに新型コロナウイルスの感染予測のモデルをつくり、様々なシミュレーションが行われた。そして、クラスター潰しはその「数学モデルとウイルスの特徴」から有効な戦術として採用された。政府はその戦術を信じることによって政策に取り込んだのである。

 接触削減などの対策を全く取らない場合、国内では重篤患者が約85万人に上り、半数が亡くなる恐れがあるとの試算をクラスター対策班が15日公表。西浦北大教授は人工呼吸器などによる呼吸管理やICUでの治療が必要となる人を重篤患者として推計。シミュレーションはR(実効再生産数)を以前と同じく2.5人と仮定。無対策の場合、重篤患者数は15~64歳が約20万1300人、65歳以上の高齢者が約65万2000人で計85万3300人となった。無対策で、重篤患者の49%が死亡すると予測。すると、単純計算で約41万8000人が亡くなることになる。接触の8割減で、約1カ月で流行を抑え込めると改めて強調した。

 対策班のTwitterでは接触の削減割合に応じて感染者数と流行終息までの期間の推計も行われている(対策班と日経との少し違った二つの画像参照)。

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そこでも8割減の接触で1か月で抑えられることが示されている。クラスター潰しという地道な方法が追いつかなくなり、爆発が始まれば、できるのは行動変容で、人と人との接触を断つことである。人が動かなければ、ウイルスは感染できない。だが、活動停止による社会的、経済的な打撃は計り知れない。接触の8割削減で感染を防ぎ、少なくなったところでクラスター潰しを再度行うというのが対策班のプラン。

 対策班の主なメンバーは科学者であり、官僚ではない。そんな人たちが頼るのは科学的知識である。ドイツの政策は科学的戦略を包含する、より包括的なもので、ドイツ国民を納得させるものだった。日本の政治家たちはクラスター潰しとPCR検査と隔離とが異なる戦略だと思い込み、日本の迷走を続けさせようとしている。

 政治家が知るべきことは、まず日本は感染症途上国であり、その上、治療に必要な医療物資さえ十分にないこと。今の日本は竹やりでアメリカ軍と戦えと言っていた昔の日本によく似ている。では、本当に竹やりしかないのか。政府はマスクを配る代わりに発熱外来を日本各地に設置する気はなかったようだが、今でも遅くない。8割の接触削減を行っている間に、台湾や韓国のビッグデータスマホの活用を学び、PCR検査の民間委託と発熱外来の整備を行い、軽度の感染者の隔離収容を行うことである。経済を気にする前に人命を気にして、開発途上国から脱する努力をすべきである。