自粛で蟄居の憂鬱な週末に:検査と隔離、連帯と共有

 PCR検査の目詰まり、専門家会議と政府の間の関係、医療従事者の負担、そしてコロナ対策に翻弄される人々の姿が毎日マスコミで取り上げられ、世の動転状態が続く。医療と経済がぶつかり合い、右往左往の毎日は疲労だけが蓄積し、次の第3波以後の体制準備には程遠い。それでも、緊急事態宣言は効果をもたらし、5月中の決着が期待されている。

 私が関心をもったのは感染症数理モデルであり、しかもその数理モデルが政治、経済、医療をリードする上位の行動決定に関わっていたこと。通常はモデルやシミュレーションは飾りのようなもので、政治、経済の専門家が政策決定をする添え物と思われてきた。だが、新感染症の流行はモデルに基づく対策がまず第一に求められた。

 数理モデルは数学、物理学、コンピューターサイエンスなどで多用されるが、数式のシステムとその計算は数理科学に馴染んだ人なら誰でも簡単に考えることができる。だから、大学初年度の学生にも扱えるが、医療技術はそうはいかない。

 自然災害の記録はその後の対策を立てるために不可欠。それに似て、感染症の流行の記録もその後の対策には不可欠。直接的なデータがないと、間接的に計算するような工夫はできない。今の日本の新型コロナウイルス対策ではこの直接的なデータがとても少なく、そのため事実として確認できるものが頼りなく、その結果、信頼できる対策が立てにくいというのが大きな特徴。

 PCR検査はまずは治療のため、次が隔離のための方法である。日本のPCR検査数の少なさは既に国際的に有名。この検査数の少なさが、九大の小田垣孝名誉教授のモデル(http://urx.blue/U6iF)によってコロナ対策にマイナスであることが示された。PCR検査を積極的に行い、陽性者をしっかり隔離することが対策として有効であることがモデルで示されている。8割接触削減も部分的な隔離だが、検査数を増やし、隔離を徹底すれば接触の削減がなくても同じかそれ以上の効果が得られるのだ。

 専門家会議とクラスター対策班がこれまで日本の対策を担ってきた。だが、そこでの議論内容を私たちは「対策と提言」を通じてしか知らない。実際の数値の報告もモデルの説明もない。諮問委員会や政府とどのようなやり取りがなされたかもわからない。もやもやしたままで宣言が出され、もやもやが続いたままである。首相も大臣も曖昧な形容詞ばかりで、情緒的な表現しか使わない。

 そんな中で、「出口戦略」などという言葉が多用されているが、重要なのは次の流行への備えがきちんとあることであり、出口はとりあえずの出口に過ぎない。その備えとはPCR検査の拡大、陽性者の隔離のシステムを早急につくることだが、韓国のやり方を真似るのが最も簡単なこと。リーダーが強引に実行するには私たちの連帯と情報の共有が不可欠。