モッコクの実

 モッコク(木斛)は、モッコク科の常緑高木。7月頃になると、直径2cmほどの黄白色の花をつけ、芳香を放つ。1cmほどの大きさの卵形の果実が実り、秋になると熟して赤い種子が露出する。この種子は樹上で赤く目立つため、アカミノキの別名がある。何の変哲もない木に見えても、樹齢を経るに従って風格の出る樹姿や放任しても樹形を整えやすいことから、日本庭園には欠かせない「庭木の王」とされ、「江戸五木(マキ、アカマツ、カヤ、イトヒバ、そしてモッコク)」の一つに数えられる。また、モチノキ、モクセイとともに「三大庭木」にも数え上げられている。花が咲き、実もなるが、最大の魅力はツヤツヤした葉で春の新芽、刈り込み後の新芽は葉全体が赤くなる。花の香りが石斛(セッコク)に似た木という意味で命名された(石斛は岩などに着生するラン)。花の時期には周囲に香りが漂い、蜂などの昆虫がよく集まる。秋に熟する実はメジロキビタキオオルリなどの野鳥が食べる。さらに、堅く緻密な材は床柱や木工(寄木細工、櫛等)に利用される。
 日本風の庭園がなくなり、つい見過ごしてしまうのがモッコクで、今の公園では主役ではなく脇役、それも目立たない脇役である。だが、じっくり樹全体を見れば、何とも滋味深く、深山幽谷の風情をたっぷり持っている。

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