日本に野生するブドウの代表がヤマブドウで、巻きひげを伸ばして、他の樹木に絡みつく。秋に熟す酸っぱい実は生食できるほか、ジャム、ワインの醸造にも使われる。ヤマブドウは雌雄異株で、雌株だけが実をつける。ヤマブドウと栽培ブドウの違いは、前者が雌雄異株、後者が雌雄同株で、栽培ブドウは1株植えれば実がつくが、ヤマブドウからワインを造ろうと思うなら、雄株と雌株の両方を植える必要がある。ヤマブドウの雄株は開花と同時に花弁が脱落し、雌しべが退化し、雄しべだけの雄花をつける。一方、雌株は両性花をつけるが、雄しべが雌しべよりも短く、雄機能が低下しているために自家受粉は困難。そのため、ヤマブドウが結実するには雌雄両株が必要ということになる。
ところで、ツヅラフジ科のアオツヅラフジの別名はカミエビ。果実は核果で、秋に6 - 8mmの球状の果実ができ、ブドウのように緑色から紫色に熟すが、有毒。熟した実はヤマブドウの実にそっくり。蔓や根はモクボウイ(木防已)という漢方の生薬になる。「葡萄色」と書いて「エビイロ」と読むように、かつて日本ではブドウのことを「エビ」と呼んでいた。そこから命名されたのが「エビヅル」で、自生している野生のブドウである。自生するブドウとしてよく知られているヤマブドウは冷涼な気候を好むのに対し、エビヅルは温暖な気候を好む。今エビヅルの実がつき始め、これから秋にかけて実が大きくなっていく。エビヅルの実はヤマブドウよりも小粒で、種も大きいため、食用として利用されることは少ない。とはいえ、ヤマブドウと同じように、エビヅルのジュースやワインを味わうことができる。
*葡萄色(えびいろ)はやや紫を帯びた暗い赤色。葡萄酒の色をさす英語の色名ワインレッド(wine-red)の色に近く、「エビカズラ(葡萄蔓)」に由来する。

(ヤマブドウ)

(アオツヅラフジ)

(エビヅル)