月見草、あるいは宵待草

 自然の風景は時代、場所によって変わる。では、自然の中の何が変わるのか。短い時間の経過で変わるのが生き物である。山や海に比べると、人や動植物は世代交代を繰り返しながら、意外に素早く変わっていく。そのためか、意識的に保持されないと変化し、時には消えてしまう。

 些細な例の一つが太宰治の『富嶽百景』にあらわれる月見草。実際はマツヨイグサであったとされる。ツキミソウは夜に咲く白い花で、メキシコ原産。江戸時代に鑑賞用として渡来した。花期は6-9月ごろで、花は夕方の咲き始めは白色だが、翌朝のしぼむ頃には薄いピンク色となる。太宰の月見草はこのツキミソウではない。今ではマツヨイグサの同属種であるオオマツヨイグサマツヨイグサ、メマツヨイグサなどのことを「月見草」と呼んでいる。

 次の例はマツヨイグサと紛らわしい「宵待草(よいまちぐさ)」。宵待草は大正ロマンを代表する竹久夢二が、「待宵草」より語呂が良いと「宵待草」と変えて、「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草の心もとなき」と詠んだ。

 野山の道端、草地、荒れ地などに生えるマツヨイグサ属は日本に自生種が無く、すべて外来種である。湾岸地域では先に渡来していたマツヨイグサ、オオマツヨイグサを駆逐しているのがメマツヨイグサ(画像、昆虫はコガネムシ)。

*湾岸地域でよく見かけるヒルザキツキミソウアカバナユウゲショウツキミソウの仲間である(画像)。

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マツヨイグサ

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マツヨイグサ

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コガネムシ

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ヒルザキツキミソウ

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アカバナユウゲショウ