コサギの雌雄識別のもつ意味




 コサギEgretta garzetta)の雌雄はほぼ識別不可能。羽色、飾り羽、足の色はどれも同じで、雌雄ともに全身白色、嘴と脚は通年黒色、足指は黄色。繁殖期に頭部に2本の冠羽が伸びるが、これも共通。体のサイズにわずかな差があり、雄が僅かに大きいが、それは平均値に過ぎず、野外での識別は困難。また、繁殖期には目先が赤紫に染まる婚姻色が現れるが、これも雌雄共通。そのため、野外観察では雌雄の判別はほぼ不可能。

 コサギの間では当然雌雄識別の手段があるのだろうが、外見からしかわからない私たちには推測するしかない。その推測の一つが行動上の違い。特に繁殖期には雌雄の間で異なる行動パターンが見られる筈である。

 私たち人間の場合も外観の違い、行動の違いが雌雄識別の主な違いになってきた。そして、それらを前提に社会的な違いがつくられ、それが歴史や文化をつくってきた。雌雄に違いがなければ両性生殖は生物学的な意味を失う。雌雄の違いは男女の違いにつながり、その違いが差別を生み出す原因になってきたことは確かだが、差別ではない違いが何かは今のところ曖昧なままなのである。その曖昧模糊とした中で、「セックス」、「ジェンダー」といった語彙が多くの人に使われ続けている。