シコンノボタンの花

 「シコンノボタン」と聞くと、「紫紺の牡丹」なのか「紫紺野牡丹」なのか、誰もが迷うところですが、正解は「紫紺野牡丹」。「赤の薔薇」なのか「赤野薔薇」なのかに似ていますが、多様な赤をもつバラには「赤の薔薇」、「赤野薔薇」という表現はどちらも適切とは思えません。

 「紫紺」という色がピッタリのシコンノボタンは公園などでよく見かけます。その紫色は幅があり、京紫から江戸紫までを優に含み、しかも変化します。紫紺の「ノボタン」はノボタン科ティボウキナ属(和名シコンノボタン属)の常緑低木です。

 一般的にノボタンといえば、シコンノボタンを指します。中南米原産のシコンノボタンは紫色の大輪の花が美しく、別名のスパイダーフラワーは、紫色の雄しべ10本のうちの5本が長く、葯(雄しべの花粉を入れる袋)の部分がクモの節のように曲がっているため。いつまで見ていても見飽きない妖艶な雰囲気の花で、色と形が一緒になって眼に飛び込んできて、見事な美を享楽する時間を与えてくれます。

 本来は常緑ですが、日本では冬に落葉することが多く、南国原産にしては耐寒性があります。流通上はノボタンとシコンノボタンが混同されていますが、ノボタンは短いオシベが黄色で長いオシベは紫色、シコンノボタンは長短のオシベが共に紫色です(画像)。

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