馬や富士の魅力から

 李公麟の「五馬図巻(ごばずかん)」(1090頃)、レオナルド・ダ・ヴィンチの「馬のスケッチ」(1470-1519)、アルブレヒト・デューラーエッチング「騎士と死と悪魔」(1513)はどれも見事な馬が描かれています。馬だけを抜き出して、見比べると、どの馬も見事な味わいがあり、どこが共通していて、何が違っているか、尽きない比較対照を楽しむことができます。実物の馬の比較鑑賞と何が同じで、何が異なるか、考えてみるのも一興です。

*五馬図巻(ごばずかん)は、北宋文人の李公麟による絵画で、北宋の皇帝へ献上された5頭の馬が描かれた連作

 実物の馬と馬の描像とでははっきりしないものを見つけようとすれば、実物の富士山と北斎の「凱風快晴」、大観の富士図のどれかを比べてみるのがいいかもしれません。すると、絵画と実物の富士山との違いを通じて、画家のアイデアの違いが見えてきます。

 さらに欲張り、馬のような生物を描くことと、山のような無生物を描くこととの違いがあるとすれば、それは何かを考えてみるのもいいでしょう。すると、画家たちを例にして、生物と無生物をどのように区別して、あるいは区別せずに描いているか調べてみたくなる筈です。