歩道のトノサマバッタ

 私が湾岸地域でトノサマバッタ(殿様飛蝗)を見たのはこれが初めてである。草の繁る空き地から歩道に飛び出してきたのだ。バッタを見ながら、子供の頃の野原が急に記憶の中から浮かび上がってくる。田舎の原っぱには色んな昆虫が棲む世界が確かにあった。

 トノサマバッタはバッタ科に分類され、ダイミョウバッタ(大名飛蝗)とも呼ばれる。夏から晩秋まで川原などの草地にいて、力強く飛ぶ姿が見られる。体長はオス35mm前後、メス45mm前後で、雌の方が大きい。飛ぶ時は羽根を大きく広げて飛び、まだら模様の羽根と大きな眼の長い顔をもつ。正に仮面ライダーの顔の原型である。

 トノサマバッタの成虫は個体によって体色が異なる。多くの個体は緑色か茶色で、幼虫時代に育った環境に由来する。青葉が多い環境で育ったトノサマバッタは緑色に、枯草が多い環境で育った個体は茶色になる。周囲の環境に合わせた体の色が「保護色」で、風景に溶け込んで敵に見つかりにくいのだ。